2016 Fiscal Year Annual Research Report
ジューン=ガル滅亡前夜の清朝外交の変容過程――講和期外交とその終焉
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15J01084
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
多久 孝一郎 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ハルハ / ホトゴイト部 / ウリャンハイ / チベット / 熬茶使節 |
Outline of Annual Research Achievements |
中華人民共和国中国第一歴史档案館(北京市)所蔵「軍機処録副奏摺」の調査・収集・分析を平成28年8月から同29年3月の約6ヶ月間実施した。具体的には、ハルハ―ジューン=ガル間の「北路」、すなわちシベリア南部のウリャンハイ(現在のロシア連邦内自治共和国のトゥヴァ共和国およびアルタイ共和国にまたがる地域に住むテュルク語系諸族)の居住地域における、乾隆18(1753)年の三ツェリン帰順の事件以前の史料の調査等を行った。その結果、同地域を媒介としたハルハ―ジューン=ガル間の密貿易が、乾隆15年末に発覚するまで、定辺左副将軍というハルハ防衛の司令官の黙認のもとでハルハ=モンゴル広域で進行していたことを明らかにした。くわえて、密貿易発覚後の清朝の対策も、ウリャンハイの管理をホトゴイト部ジャサクに委ねるという従来の体制が温存されたことを論じた。 また平成26年度までに検討を進めていた、ジューン=ガルが清朝の許可・護送のもとチベットに派遣した熬茶使節に関しても、その使節の活動実態とその影響について検討を行った。それにより、使節による中央チベット僧院への布施の規模が当時の同地域におけるそれを大きく上回っていたことを解明した。また、先行研究ではほとんど考慮されてこなかった、ジューン=ガルによる熬茶使節派遣がチベット情勢に与えた影響について、大規模な布施をもたらした使節の帰還後、当時チベットを治めていたポラネーが清朝の命令にひそかに背き、ジューン=ガルに長く滞在した後使節に随行して故地たるチベットに帰還していた僧侶を匿っていたことを明らかにした。以上の熬茶使節に関する研究成果は18世紀中葉の東部ユーラシア内陸部の国際情勢を論じる上でも、清朝の講和期対ジューン=ガル外交の変容過程を検討する本研究課題にとっても欠かせないものである。 また、前年度に行った2本の研究報告の内の1本を論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
6ヶ月の長期にわたり二度目の中国第一歴史档案館の史料調査を実施し、浩瀚な史料である「軍機処録副奏摺」の調査・収集を十分に行えたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に実施した、乾隆18年以前のハルハ―ジューン=ガル間の「北路」に関する「軍機処録副奏摺」の調査・収集・分析を受けて、今後は、乾隆18年から同20年のジューン=ガル征討開始までの「北路」情勢の変動について、同史料の調査・収集を再び中国第一歴史档案館において約3ヶ月ほど行い、帰国後、本格的に収集した史料の分析を実施する。 また、平成28年度に実施した熬茶使節に関する研究成果の論文発表を予定している。
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Research Products
(1 results)