2015 Fiscal Year Annual Research Report
華僑と中国の関係性-シンガポール福建人・僑郷・南京国民政府の三極構造に着目して-
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15J01147
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松野 友美 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 華僑 / シンガポール / 福建 / 廈門 / 南京国民政府 |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度の研究実績は次のように、1論文発表と、2資料調査に大別することができる。
1 論文発表。「廈門における南京国民政府の僑務政策とシンガポール福建系華僑の交錯する利害―1930年代の廈門~シンガポール間における移民運送事業の再編を手がかりとして」『華僑華人研究』、2015年11月(第12号)。本論文は、主に昨年度までに収集してきた資料をもとに、華僑と南京国民政府間で見られた経済的利権対立を検討した。具体的には、南京国民政府が、華僑の出入国管理を強化する目的で設立した廈門僑務局に着目し、本機構の設立が地域社会および華僑に与えた影響を検討した。その結果、南京国民政府が廈門僑務局の設立を通して地域社会の管理を強化する中で、一部の華僑とは利権の衝突が発生し、両者の間に対立的な関係性が見られたことを明らかにした。
2 資料調査。27年度は、華僑による出身地での教育事業の在り方を通して、華僑と南京国民政府の関係について分析を進めるため、台湾・廈門・シンガポールにて資料調査を行った。まず、9月から10月にかけて、廈門および台湾の両地にて調査した。廈門では廈門大学、廈門市図書館にて、台湾では国史館、国民党党史館を中心に調査した。また、2月にシンガポール国家図書館、国立大学にて、『星洲日報』を中心に閲覧し、資料収集を行った。これらの調査によって収集した資料の分析からは、出身地の混乱した社会情勢のため、華僑の教育事業が、出身地の政治・軍事的要因と深く関わっていたこと、および南京国民政府の国家建設の進展によって、教育事業を通して華僑と政府の間に衝突が生まれていったことが判明しつつある。より分析を深め、今後成果を発表していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
福建省(廈門大学、廈門市図書館)、および台湾(国史館、国民党党史館)にて資料調査を行った結果、華僑による福建省での教育事業の実情に関連する資料を豊富に収集することができた。さらにシンガポールでは『星洲日報』を収集でき、研究テーマを多角的に分析するための材料を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、平成27年度は、華僑による中国への政治参加の側面から華僑と南京国民政府の関係について分析する予定であったが、史料状況、およびテーマの統一性から、教育事業を切口に分析を進める事がより有効であると判断した。今後は、昨年度収集した資料を中心的に扱い、華僑による教育事業を手がかりに、華僑と南京国民政府について分析を深め、その成果を論文にまとめる。同時に、これまで行ってきた研究をもとに成果を取りまとめ、博士論文を執筆する。
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Research Products
(1 results)