2015 Fiscal Year Annual Research Report
材料工学的視点によるがん骨転移における骨微細構造制御機構の解明
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15J01150
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
関田 愛子 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | がん骨転移 / 骨配向性 / アパタイト / コラーゲン / オステオサイト / 骨力学機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん骨転移における骨微細構造変化の制御機構を明らかにするため、①骨配向性に注目した骨微細構造変化の解析、②骨微細構造変化を引き起こす生体メカニズムの解明、を中心として研究を進めている。 平成27年度は主に、造骨型および溶骨型の骨転移動物モデルを用いて組織レベルでの骨微細構造変化と、それに伴う骨系細胞の生物学的変化について検討を行った。①については、まず、マウスへのがん細胞移植により骨転移を誘導し、臨床上問題となる骨転移症状の特徴を有する動物モデルの確立に成功した。これらの、造骨もしくは溶骨を起こした長管骨において、骨力学機能変化を調査するとともに、コラーゲン/生体アパタイトの配向性を定量的に解析し、骨配向性解析法を最適化することができた。さらに、いずれのモデルにおいても、がん転移の結果、骨力学機能と相関して骨配向性が低下していることを確認した。②については、組織染色法を中心に骨形成や骨吸収の活性を調査し、がんの影響による骨代謝シグナルの変化を明らかにすることができた。さらには、骨配向化制御に大きく関わっていると考えられるオステオサイト骨細管ネットワークについて、ナノCT法による形態計測および免疫染色法によるオステオサイト内タンパク発現変化解析を行い、ネットワークに対するがんの影響を検討しているところである。 また、組織を用いた解析と同時に、in vitro におけるがん細胞―骨系細胞の共培養系の確立にも着手した。まずは、がん細胞の放出する可溶性因子が、骨芽細胞あるいは破骨細胞の骨代謝活性に与える影響を調査することに成功した。今後は、骨配向化に関連する細胞活性の調査を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
がん骨転移における骨微細構造の変化を明らかにし、その制御に関わる可能性のある生物学的な因子について、順調に研究を遂行している。特に、オステオサイトネットワークの骨配向化制御への影響については、多方面からの解析を行うことにより、極めて新規性の高い研究を展開しており、これをさらに進めていくことで最終目標を達成することができる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、前年の結果を踏まえ、がん細胞―骨系細胞の相互作用において細胞タンパク・遺伝子発現変化がどのような経路で起こり、最終的に生体内での骨微細構造変化をもたらしているかを、より詳細にかつ体系的に調査を進める。組織および培養系を用いた解析を駆使して、がん細胞―骨系細胞のクロストークとその周辺シグナルについて解明を目指す。なかでも、骨配向性低下に寄与していると考えられるオステオサイトの形態と機能に関する変化には、種々の細胞接着分子やイオンチャネルを介したシグナル経路の異変が関与している可能性が高いことから、これらに注目したがんの影響を検討していく予定である。
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Research Products
(1 results)