2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J01158
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮嶋 佑典 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 日本海 / 新生代 / 冷湧水 / メタン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度では秋田県由利本荘市および男鹿市,青森県深浦町,北海道札幌市,夕張市,中川町,留萌郡,三笠市にて地質調査を行い,日本海側地域の新生代冷湧水の探索を行った.その結果,秋田県由利本荘市の上部中新統女川層より2か所(産地1,2),男鹿市の中部更新統脇本層より1か所(産地3),青森県深浦町の上部中新統赤石層より1か所(産地4),北海道夕張市の中部中新統滝の上層より1か所(産地5)の冷湧水性と思われる貝類化石の産地を確認することができた.これらのうち産地1,2,および4は貝化石の産状および冷湧水起源と考えられる炭酸塩岩が発達しないことから,元の生息場から貝が運搬されて堆積した異地性のものと考えられる.一方で産地3と5では,原地性と判断できる冷湧水性のオウナガイ,シロウリガイ類の化石が炭酸塩岩を伴って産出する.これらの炭酸塩岩は研磨面ならびに薄片の観察結果から,clotted fabricや空隙セメントといった冷湧水起源の炭酸塩岩に特徴的な組織を示すこと,また粉末X線回折による鉱物組成の分析結果からカルサイトを主成分とすることが分かった.両産地の炭酸塩岩の炭素・酸素安定同位体比の測定を行ったところ,いずれも低い負の炭素同位体比・正の酸素同位体比を示すことから,冷湧水場でのメタンの酸化によって形成されたこと,および埋没続成の影響をあまり受けていないことが示された.以上の野外調査ならびに室内分析の結果から,日本海側地域における新生代冷湧水,およびそれに伴う化石群集の時代的な変遷・空間分布を把握するうえで重要な知見が得られた.また,これまで確認した長野県~新潟県の中新世~鮮新世の冷湧水産地と合わせて,日本海形成以降の各時代に,当地域の各地で冷湧水が起こっていたことが明らかになったという意義がある.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度では当初の研究計画通り,秋田県~北海道の日本海側地域で野外調査を実施し,シロウリガイ類化石や冷湧水炭酸塩岩の産地を複数確認することができた.一部の調査地域では化石や炭酸塩岩を確認することができなかったが,少なくとも男鹿市の更新統脇本層と夕張市の中新統滝の上層からは確実な冷湧水性の化石と炭酸塩岩を確認することができ,今後の研究の発展に必要な知見や試料を得ることができた.研究計画通り,野外で採取した化石の剖出・同定を行い,岩石試料の薄片観察や鉱物組成,炭素・酸素安定同位体比の分析を年度末までに完了した.調査航海にも参加し,国内外での学会発表も予定通り行った.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に男鹿市の脇本層,夕張市の滝の上層より採取した冷湧水性の炭酸塩岩試料について,随時バイオマーカーの抽出ならびに分析を行う.また,長崎県対馬市の下部中新統対州層群に見られる冷湧水炭酸塩岩の薄片観察,鉱物組成,炭素・酸素同位体,バイオマーカーの分析を行う.さらに,新たな試みとして,これまでに確認した日本海側地域の新生代の冷湧水について,時代・地域ごとに湧水中に含まれていたメタンの起源に違いがあるかどうかを明らかにするため,以下の分析を実施する.平成27年度に得た試料に加え,長野県松本市の中部中新統別所層,新潟県上越市の上部中新統能生谷層,十日町市の下部鮮新統田麦川層,および対馬市の対州層群より採取した冷湧水性の炭酸塩岩試料について,それらのバイオマーカー炭素安定同位体比の分析を行う.これにより,各湧水場に生息していた微生物が酸化したメタンの炭素同位体比を推定する.また,冷湧水炭酸塩岩を酸で溶解,あるいは粉砕することにより内部にトラップされた微量ガスを抽出することで,過去の湧水中に含まれていたメタンの炭素同位体比を直接分析する手法に取り組んでいく.2016年5月に幕張メッセで開催される日本地球惑星科学連合2016年大会,6月にワルシャワ(ポーランド)で開催される1st International Workshop on Ancient Hydrocarbon Seep and Cognate Communities,およびパシフィコ横浜で開催されるGoldschmidt2016での学会発表も行う.新潟県能生谷層のメタン湧水炭酸塩岩に関する論文(投稿中),長野~新潟県の新生代冷湧水に関する論文,長野県別所層の新たなシロウリガイ類化石の記載論文を投稿予定である.
|
Research Products
(4 results)