2015 Fiscal Year Annual Research Report
新谷関数の明示公式とその保型形式および保型L関数への応用
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15J01163
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
源嶋 孝太 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | Shintani関数 / 保型形式 / 保型L-関数 / Poincare級数 / Rankin-Selberg法 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、(1)対称対(SL(2,C),SL(2,R))に関する非ユニタリ主系列表現のdistinguished模型の中の特殊関数を用いた、SL(2,C)上のカスプ形式の構成法の考察、および、(2)分裂直交群上の保型形式に対して導入されたMurase-Suganoゼータ積分による保型L-関数の構成法の、階数2のsimilitude付き斜交群GSp(2)上の(中心指標が自明とは限らない)保型形式への拡張を行った。また、拡張されたゼータ積分を明示的に計算するために、そのゼータ積分の局所因子の被積分関数として現れる局所Shintani関数の明示公式の研究に取り掛かった。
(1)G.Savin(Israel J. Math. 1992)により、L^2(SO(n+1,1)/SO(n,1))の部分表現の行列要素を用いた、Poincare級数によるカスプ形式の構成法が提案されている。昨年度は、まず非ユニタリ主系列表現に対するdistinguished模型の中の特殊関数の明示公式を用いて、その特殊関数がL^2(SL(2,C)/SL(2,R))に属することを証明し、Savinの構成法に則り、適当なSL(2,C)の離散部分群に関するPoincare級数がcuspidal条件をみたすことを証明した。
(2)直交群上の保型形式に付随するL-関数を調べる手法として Murase-Sugano (Math. Ann. 1994) により、 Shintani関数を用いた保型L-関数の積分表示によるRankin-Selberg法が導入された。この方法の特色はメインとなる直交群の他に、 ある二つの代数群をうまく用いる点にある. 昨年度は、この手法を階数2のsimilitude付き斜交群GSp(2)上の(中心指標が自明とは限らない)保型形式に拡張した。その際、この方法で用いる代数群をうまく選択する必要があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)SL(2,C)の離散部分群で、Poincare級数が非零となるようなものが存在することは知られている。しかし、そのような離散部分群の具体例は知られていない。昨年度、より具体的なカスプ形式の例を得るべく、具体的な離散部分群に対するPoincare級数の非消滅定理の証明を試みたが、証明するに至らなかった。
(2)局所Shintani関数へのHecke環の作用から得られる差分方程式を導出し、それを解くことによりGSp(2)の局所Shintani関数の明示公式を得る予定であったが、差分方程式が複雑で、それを明示的に書き下すに至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)SL(2,C)上のカスプ形式に関する情報収集を行いつつ、Poincare級数の非消滅定理の証明を試みる。Poincare級数を用いたSO(n,1)上のカスプ形式の構成の基礎として、対称対(SO(n,1),SO(n-1,1))に関するdistinguished模型の研究も進める。
(2)差分方程式を明示的に書き下すことは困難であるように思われるため、D.Prasadにより知られている局所Whittaker関数の積分変換、または、Poison積分によって局所Shintani関数の構成を試みる。
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Research Products
(1 results)