2015 Fiscal Year Annual Research Report
非社会性昆虫コメツキモドキにおける最も発達した栽培共生「農耕」の起源
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15J01207
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土岐 和多瑠 京都大学, 生態学研究センター, 特別研究員(SPD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 栽培共生 / 農耕 / 非共生菌 / 菌嚢 / 非社会性昆虫 / ニホンホホビロコメツキモドキ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、非共生菌の種類によってニホンホホビロコメツキモドキ幼虫の生存や成長への影響が異なることを実験的に明らかにした。これにより、病害の種類によって宿主への影響が異なるということを非社会性昆虫-菌栽培共生系で初めて示すことができた。菌嚢へいつ、どのように共生菌を取り込むのかを調べた結果、羽化直後に体液を放出することで共生菌を菌嚢に取込むこと、共生菌と非共生菌とを区別せずに取込むことを実験的に明らかにした。これにより、昆虫ではほとんど解明されていない共生菌の菌嚢への取込み時期と方法を解明できた。海外野外調査を行い、複数のホホビロコメツキモドキ属昆虫を新たにサンプリングし、生態を明らかにした。遺伝子解析により、形態形質に基づき分類されてきたホホビロコメツキモドキ属は単系統を示さず、4系統が認められた。そのうち2系統は酵母食の種で構成された。これにより、農耕の起源を探る上で重点的に調べるべき2系統を把握できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、海外調査を春から夏に2度行ったため、日本国内での大規模な調査、実験があまりできなかった。しかし、海外調査で得られた種も含めて予備的に分子系統樹を構築したことで今後調べるべき分類群を明らかにすることができた。国内に関しては予備実験を多数を行い、今後詳しく調べるべき項目を明確化させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
農園創設前の害菌対策の解明、共生系に対する影響の異なる非共生菌に対する酵母の拮抗菌抵抗性の解明、酵母の作る抗菌物質の特定に取り組む。垂直伝播時の害菌対策として、菌嚢内で酵母の選抜が起きるか、そもそも菌嚢に酵母を取り込む際の農園には非共生菌の侵入が起きていないのかを調べる。農園内や菌嚢内の菌相の時系列変化を詳しく解明したい。コメツキモドキ族における農耕と竹利用の関係については、信頼性の高い分子系統樹の作成が必要となる。さらに調査地を増やし、より多くのホホビロコメツキモドキを得る。遺伝子領域を増やして解析を行う。特に酵母食性の種で構成される2系統に関して、農耕が見られるのか詳細に調べていく。
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Research Products
(6 results)