2015 Fiscal Year Annual Research Report
時空間制御型複数遺伝子破壊システムの確立と生殖生物学への応用
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15J01244
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉岡 伸 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ゲノム編集 / CRISPR/Cas9 system |
Outline of Annual Research Achievements |
個体レベルで遺伝子機能を調べる場合、ゲノム改変動物を作出し、機能評価する手段が有効であるが、現在用いられているES細胞を利用したゲノム改変動物の作製系は時間やコストの点で利用するのは困難である。近年、CRISPR/Cas9 system を利用したゲノム改変がその簡便性および効率性の高さから普及している。しかし、現行のCRISPR/Cas9 systemはgRNA発現にユビキタスな発現を誘導するRNA pol IIIプロモーターが広く利用されており、全身でgRNAの発現が誘導されることから、厳密な部位・時期特異的コントロールが難しい。そこで最初に時空間制御が可能なRNA pol IIプロモーターで機能するgRNA発現系の確立を行った。RNA pol IIプロモーターを利用するとgRNAが機能しない理由として、キャップ構造やpoly Aの付加が考えられるため、自己切断能を有するリボザイムをgRNAの両端に配置し、転写後にgRNAが切り出されるかどうかをノザンブロットにより確認した。その結果、切断されたgRNA発現が認められ、本gRNA発現系を用いることで変異導入が可能であることを確認した。次に、単一のRNA pol IIプロモーター制御下でgRNA・Cas9 両方が発現する系 (mono-promoter 型CRISPR/Cas9 system)を確立し、変異導入できることも確認した。また、mono-promoter型CRISPR/Cas9 system を応用することで、一度に複数の遺伝子を改変可能であることを確認した。最後にmono-promoter 型CRISPR/Cas9 system の特異性を評価するためにTet-on system を活用し、ドキシサイクリン存在下でのみgRNA・Cas9発現が誘導される系とCas9発現のみがドキシサイクリン制御下にある現行の系を比較した所、現行の系ではドキシサイクリン非存在下でも変異導入されたのに対し、gRNA・Cas9 共にドキシサイクリン制御下にある系ではドキシサイクリン依存的に変異導入されることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は計画通りに時空間制御に適したCRISPR/Cas9 system の確立が達成できた。すなわち、現行ではユビキタスな発現が誘導されるRNA pol III promoter を利用したgRNA発現を時空間制御に適したRNA pol II promoterで制御可能にした。また、単一のRNA pol II promoterでgRMA および Cas9 を発現し、機能するmono-promoter型CRISPR/Cas9 systemの確立も行い、これらの成果を論文として公表した。このことから、おおむね順調に進展していると評価することが出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、時空間制御に適したCRISPR/Cas9 system の確立は達成できたものの、変異導入効率が現行の系と比較して低くなる問題が新たに浮上した。これはリボザイムによるgRNAの切断効率に起因すると考えられるため、他のリボザイムを用いるなどgRNAの切断効率の向上を目指す。また、申請者らが確立した系を用いて個体レベルでの変異導入を確認できていないため、個体レベルにおける変異導入を実践する予定である。
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Research Products
(2 results)