2015 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属触媒を用いたオレフィンの立体選択的ヒドロ官能基化反応の開発
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15J01245
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永本 翠 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | イリジウム / キラルジエン / 不斉環化 / カルボン酸 / アミド / ヒドロアシル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,直截的で原子効率の高い分子変換反応の開発を目的とし,アルケンへのX-H結合(X = C, O, N)の立体選択的な付加反応に取り組んでいる.本年度は,イリジウム触媒を用いて以下の三つの付加反応を開発した(1,2,3).また,芳香族ケチミンとアルキンとの不斉環化反応を開発した(4).
1.ビシクロアルケンへのアシルC-H結合の付加反応:ヒドロキソイリジウム錯体存在下,サリチルアルデヒドのビシクロアルケンへの付加反応が,高立体選択的に進行した.また,キラルジエン配位子を用いて,不斉反応への展開も行った.研究成果は学術雑誌に掲載された. 2.不活性アルケンへのO-H結合の分子内不斉付加反応:中性イリジウム/リン錯体存在下,アミド溶媒中でアルケニルカルボン酸の不斉環化反応が進行し,対応するラクトンが高いエナンチオ選択性で得られた.研究成果は学術雑誌に掲載された. 3.不活性アルケンへのN-H結合の分子内不斉付加反応:中性イリジウム/キラルジエン錯体および触媒量のアミン存在下,アルケニルアミドの環化反応が進行し,対応するピロリジノン誘導体が高いエナンチオ選択性で得られた.研究成果の一部は学会で発表した. 4.芳香族ケチミンとアルキンとの不斉[3 + 2]環化反応:カチオン性イリジウム/リン錯体存在下,3位および5位に置換基を有する芳香族ケチミンとアルキンとのC-H活性化を経る環化反応が進行し,対応するアミノインデン誘導体が高いエナンチオ選択性で得られた.また,触媒量のブレンステッド酸を添加するとエナンチオ選択性が逆転することを見いだした.研究成果は学術雑誌に投稿し,受理された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,原子効率の高い官能基化アルカンの合成手法として,X-H結合(X = C, N, O)のアルケンへの付加反応,いわゆるヒドロ官能基化反応の開発を目標としている. 不活性なC-H結合の付加反応として,アシルC-H結合の活性化を伴うヒドロアシル化反応を開発した.ヒドロキソイリジウム/ジエン錯体を用いることで,ビシクロアルケンへの付加反応が高立体選択的に進行した. ヘテロ元素-水素結合の付加反応については,まず分子内反応の開発に取り組み,カルボン酸のO-H結合の分子内不斉付加反応を開発した.中性イリジウム/リン錯体を用い,アミド溶媒中で反応を行うことで高いエナンチオ選択性が発現した.また,カルボン酸の不斉付加反応に着想を得て,カルボン酸と同様に酸性度の高いアミドのN-H結合の分子内不斉付加反応を開発した.カルボン酸の付加反応とは異なり,イリジウム/ジエン錯体および触媒量のアミンを用いることで高いエナンチオ選択性が発現した.反応機構についても検討し,同位体ラベル実験によってこの反応はイリジウム錯体によって活性化されたアルケン部位へのアミドの求核付加を経て進行していることが示唆された. 以上のように,本年度は3つのヒドロ官能基化反応を開発した.また,反応機構について得られた知見は今後新たな触媒系を検討するうえでの手がかりとなるものであり,研究はおおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
不活性なC-H結合の単純アルケンへの付加反応およびヘテロ元素-水素結合のアルケンへの分子間付加反応に取り組む. まず,2-アルキルアミノピリジンの第二級アルキルC-H結合のアルケンへの不斉付加反応の開発に取り組む.カチオン性イリジウム/リン錯体を用いた反応が既に報告されているが,イリジウム/ジエン錯体を用いてより温和な条件で高選択的に反応が進行する触媒系を探索する.現時点で,アミノピリジンの3位に置換基を導入することで反応性が大幅に向上することが明らかになっており,キラルジエン錯体を用いた不斉反応への展開を目指す. また,カルボン酸およびアミドのアルケンへの付加反応を分子間反応へと展開する.分子内反応で有効であった触媒系を用いても,スチレンやビシクロアルケンへの分子間付加反応は全く進行しなかった.そこで,まずは基質に配向基を導入することで,付加するヘテロ元素-水素結合とアルケンを効果的に接近させることを試みる.ピリジル基やアミノ基のほか,変換可能なカルボニル基等を検討する.
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Research Products
(7 results)