2015 Fiscal Year Annual Research Report
エスカレーション型放散仮説の検証:東アジア産陸産貝類を例として
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15J01258
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平野 尚浩 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 陸産貝類 / 東アジア / 捕食者 / 種分化 / ナンバンマイマイ科 |
Outline of Annual Research Achievements |
本仮説を検証するにあたり、基礎情報として東アジア産の陸産貝類の系統関係の解明を試みた。まず日本を中心として野外から関連するナンバンマイマイ科(旧オナジマイマイ科)陸産貝類の分類群を網羅的に採集し、一部は分子系統解析を行った。その過程で得られた一部の種群(オオベソマイマイ属)について、新種記載を行った。記載については陸産貝類の分類学研究者である亀田勇一氏(国立科学博物館)と共同で行った。また形態解析について、特に中国内陸部のナンバンマイマイ科の殻形態を解析した。殻形態はデジタルカメラによる写真撮影を行い、そのパターンを定量化して多変量解析を行った。その結果、これまでの研究の結果から得られたデータと比較して、中国内陸部のナンバンマイマイ科陸産貝類の種群が日本本土の種群と比較して殻形態(輪郭パターン)の多様性が高い傾向が見られた。さらに、殻形態の定性的な評価をした結果、殻口の突起や殻表面の顕著な毛の存在、殻の巻数の多さが確認された。中国内陸部には陸産貝類の捕食者である貝食性昆虫(オサムシ類)が比較的高密度で生息しており、これらのナンバンマイマイ科陸産貝類の種群の形態形質は捕食者に対する防衛形質であることが考えられる。加えて、これらの陸産貝類の系統は既存の形態分類では様々な属に分けられているにもかかわらず、実際には一部を除いて単系統となり、遺伝的には非常に近縁である事が明らかになった。以上の結果から、これらの陸産貝類の殻形態の劇的な変化を伴った放散には捕食者が関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた中国内陸部地域でのサンプリングが困難になり詳細なコドラート調査ができず、また貝食性昆虫であるオサムシ類を用いた行動実験も行えていない。一方で基礎的な系統関係については一部の分類群で記載という形で既に論文として発表しており、全体的にはおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は計画どおりに進めていくとともに、東アジア地域での幅広い採集により陸産貝類の殻形態の多様化と捕食者との関連性について調べる予定である。また、実際に野外調査で対象とする陸産貝類・貝食性昆虫の分布・密度を把握し、どこまで捕食実験を進めるか適宜判断する。さらに、これまで明らかになっている系統のうち、非常に近縁にも関わらず劇的に形態が多様化したものがあり、中立マーカーでは関係性が不明瞭である。これらについては網羅的遺伝解析を行い真の系統関係の把握を行いたい。
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Research Products
(7 results)