2015 Fiscal Year Annual Research Report
Rigidity theoryの技術を用いたIII型フォンノイマン環の研究
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15J01338
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
磯野 優介 京都大学, 数理解析研究所, 特別研究員(SPD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | full factor / von Neumann algebra / type III factor / free group |
Outline of Annual Research Achievements |
私は,トレース写像を持たないIII型というクラスのフォンノイマン環について研究している.今年度は,fullと呼ばれる性質について研究した.これはA. Connesにより1970年代に導入された概念で,現在ではフォンノイマン環の基本的な特徴付けの一つとなっている. より具体的には,離散群が測度空間に(自由かつエルゴードに)作用している時,そこからフォンノイマン環が出来るが,これがいつfullになるかという問題を考えた.作用が測度を保つ場合に限れば,自然な十分条件が知られているが,一般の作用については何も知られていなかった. 私は今年度,C. Houdayer氏との共同研究で,この問題に対する十分条件を見つける事に成功した.具体的には,作用が強エルゴード(これは必要条件なのでいつも仮定される)であり,かつ群が「bi-exact」である時に,作られるフォンノイマン環がfullである事を示した.測度を保たない作用の場合は,これまで全く知られていなかった現象である.また,Bi-exactな群の例としては,自由群や双曲群などが挙げられる.特に,自由群はフォンノイマン環論で最も重要な例である事に注意しておく.さらには,自由群の強エルゴードかつ測度を保たない作用の具体例を構成し,それによりfullなIII型フォンノイマン環の新しい具体例を与える事も出来た. また,発表したのは昨年度であり,まだ論文としては掲載されていないが,申請書に記載した問題の一つである「free Araki-Woods factorの一意テンソル分解定理」を肯定的に解決する事が出来た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した「free Araki-Woods factorの一意テンソル分解定理」の問題を,肯定的に解くことが出来たから.これは,記載したものの中でも最も興味深く重要な問題である. また,fullなIII型フォンノイマン環の,新しい例を構成する事が出来たから.
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に記載していたいくつかの具体的な問題は,すでに全て解決した.そのため来年度以降は,これまでの研究の技術を生かせる方向で,新たな問題を研究していきたい. 現在具体的に興味を持っているのは,離散群の測度を保たない変換から作るフォンノイマン環の研究,III型の部分因子環の新しい例の構成,III型フォンノイマン環の不変量の計算などである.
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Research Products
(6 results)