2015 Fiscal Year Annual Research Report
コンゴ民主共和国東部州における流通網の現状とその再建
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15J01455
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高村 伸吾 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 紛争後社会 / 定期市 / 河川交易 / 零細商人 / 住民組織 / 内発的発展 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、紛争により橋や道路などの流通基盤が崩壊したコンゴ東部において(1)零細商人がどのように商品流通を再編・回復しているのかを明らかにし、(2)ローカルのもつ潜在力に立脚した社会復興への道筋を検討することである。本研究課題の初年度である2015年度はまずこれまで収集した一次資料の分析をもとに、日本アフリカ学会学術大会にて発表した。その後、紛争に対する商人の対処策と現地の流通実態について8月からの計5ヶ月間、コンゴ東部州イサンギ県にて広域的なフィールドワークを実行した。延べ37の市場を直接観察し、参集する商人・地方行政官への聞き取り調査を行った結果、陸上輸送インフラの荒廃に対して、商人は独自に船外機や平底船などの外来技術を導入し、水上輸送を基盤とした定期市流通システムを構築していることが分かった。また、紛争終結以降、内陸部でも定期市の簇出が観察され、流通の漸進的な回復を受けて農村部において共同畑の開墾や橋の修復など住民組織による復興活動が活発化している。紛争により政府機能が著しく低下しているコンゴ社会において、地域住民の課題解決に向けた内発的な取り組みは極めて重要であり、既存の紛争研究において等閑視されてきた人々の「下から」の社会再建活動について今後調査を継続する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東部州イサンギ県内部に存在する37の定期市について実踏調査を行い、州都キサンガニから内陸地域におよぶ広範な領域でどのように商品流通が実現されているのか明らかにすることができた。また植民地期に構築された外国企業による生産・流通体制の崩壊に対し、コンゴ商人ならびに地域住民は丸木舟や定期市などの伝統的装置を活用しつつ、積極的に外来技術を導入・普及することで課題の解決に努めていることが分かった。こうした人々の対処は、本研究課題における(2)ローカルのもつ潜在力に立脚した社会復興にも直接的に関わっており、今後の調査を進めていく上での指針を定めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度前半は、日本にて、これまで取得したデータの整理・分析を行い、論文へとまとめる。その後、コンゴ民主共和国東部州にて再度長期のフィールドワークを行い、コンゴ商人の生計に関する調査を継続する。紛争終結以降、商人がどのように資本を蓄積し、船外機や平底船などの技術を導入したのか。平底船の所有者などに対して聞き取り調査を行い、外来技術の導入経緯ならびに普及の過程について明らかにする。また今日活動を活発化させている住民組織による橋再建にも注目する。参与観察と聞き取り調査に基づき詳細なデータを収集し、住民組織活動が抱える課題と可能性について検討を加える。
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Research Products
(3 results)