2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J01460
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
影山 亮 立教大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 山手樹一郎 / 池袋 / 徳富蘇峰 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究成果として挙げられるのが「マーケット街の光と闇―同時代の人々の目に映る池袋―」(『立教大学日本文学』115号、2016年1月、立教大学日本文学会)である。 本論文では池袋という地に絞り同時代の文学作品にどのように描かれ、雑誌に取り上げられ、新聞で報道されていたのかを調査することで、同時代の人々の目に映った池袋という地を検証していった。また池袋には「豊島文人会」に所属していた江戸川乱歩や山手樹一郎などの文人が数多く居を構えていた。このことから池袋は一種の文化的な空間としても認知されており、戦後のマーケット街が起因となって発展していく池袋をそういった実際に池袋で生活する人々はどういう視点で捉えていたのかも併せて考察するに至った。その結果、戦後池袋のマーケット街というと終戦からの復興の象徴や悪所としての一面のみがクローズアップされてきたが、それは池袋が生活圏ではなく盛り場としてのみ利用する池袋を通過していく人々から捉えた視点であった。しかし池袋に住む人々は自らの生活する地が悪所として有名になっていく、マーケット街の闇の側面を誰よりも憂いていた。それは同時代の資料からも読み取ることが出来、本論文ではそういった池袋を通過していく人々の単一的な視点からだけでなく、戦前から池袋に住む人々からの視点を含めた、それぞれの立場の目に映った同時代の池袋を提示できたと考えている。山手樹一郎に関する研究を進めていくうえでも、山手の作家活動の基になっていた豊島区という地との関わり方を考察することも大切であり、本論文はその問題に答えている。 また2017年に勉誠出版より刊行予定の『江戸川乱歩事典』の「山手樹一郎」や「池袋」など11項目を執筆した。研究は広く一般にフィードバックすることが非常に重要であり、これもまた山手樹一郎を中心とした時代小説研究を邁進するための一つの過程と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度4月から始まった独立行政法人日本学術振興会特別研究員(DC2)採用1年目で特筆すべき事項は、受入研究者(指導教授)の変更であった。現在所属する立教大学大学院文学研究科博士課程前期課程1年目から指導にあたっていた指導教授の定年退職に伴い変更があったわけで、指導方法や研究方針の違いがあったため戸惑いの連続であった。そのため引き続き前任の指導教授にも指導を仰ぐとともに、現在の指導教授からはそれまでとは異なる新たな視点から指導を仰ぎ、博士論文の完成を目指しているのが現状である。 平成27年度の研究成果についてだが、論文では「マーケット街の光と闇―同時代の人々の目に映る池袋―」(『立教大学日本文学』115号、2016年1月、立教大学日本文学会)である。戦後70年であった平成27年度は各地で太平洋戦争を振り返る研究やシンポジウム、イベントが開催されたが豊島区池袋でも「戦後池袋―ヤミ市から自由文化都市へ―」が開催された。研究対象である山手樹一郎も豊島区在住であり、山手が所属した「豊島文人会」のメンバーである江戸川乱歩や大下宇陀児らも池袋在住であったため同時代の池袋のマーケット街に関する論文を執筆し、掲載に至った。また平成29年1月に勉誠出版より刊行予定の『江戸川乱歩事典』内の「山手樹一郎」や「池袋」など11項目を執筆した。 なにぶん指導教授の変更があり、本来の計画と比べて成果が少なかったが、よりペースアップし成果を残すとともに、博士論文へとつなげる計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はより多くの論文を所属機関だけではなく、外部の学会等に投稿し掲載を目指す。また学会発表も行う 具体的には昭和10年代の山手作品に数多く見られる尊王攘夷を扱った作品に注目し、同時代に多大な影響を与えていた徳富蘇峰『近世日本国民史』との関係性を考察した論文(執筆済み)を『日本文学』(日本文学協会)に、現在までに60度以上映画化されている山手作品のなかでも最も多く映画化された『桃太郎侍』と同時代の映画界、特に大映と市川雷蔵の存在との連なりについての論文(執筆中)を『日本近代文学』(近代文学会)に投稿予定である。さらに以前より制作している『新・山手樹一郎著作年譜』の補遺についても投稿予定である。また山手作品のみならず時代小説界に影響を及ぼした長谷川伸と三田村鳶魚について昭和文学会で学会発表を投稿予定である。 こういった隣接的な研究領域も含めて研究の裾野を拡大し研究全体にもう少し求心的な展開見せることが博士論文の完成という研究計画の一つの通過点に至ると考えている。
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Research Products
(2 results)