2015 Fiscal Year Annual Research Report
スケジューリング問題における割り付け規則を用いたメタヒューリスティクスの提案
Project/Area Number |
15J01601
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
横山 想一郎 北海道大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 組合せ最適化 / ジョブショップ問題 / ヒューリスティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では,代表的なスケジューリング問題であるジョブショップスケジューリング問題(Job-shop Scheduling Problem, JSP)を対象とした近似解法について,より複雑な目的関数や制約条件を持つ拡張JSPを対象として適用する際に,拡張により変化する問題の性質に着目し,拡張JSPの種類に依存して効果的な適用の方法が異なることを明らかとした. 特に,前年度までの研究において,拡張JSPに対する有効性が明らかとされた,割り付け規則を局所的に用いる方法を対象とした. 第一に,各仕事に関して納期および納期遅れのペナルティ重みが設定され,納期遅れ時間と重みの積についての総和の最小化を目的とする,納期遅れ和の最小化問題を考えた.こうした問題は,一般的なJSPと比較し,多くの変更が納期遅れ和を減少させ得ることから,局所探索法の効果が低下する.このため,前年度で示されたとおり,局所的な割り付け規則の適用が効果的である.一方で,利用可能として明示される複数の機械から,占有する機械を選択することが求められる,フレキシブルJSP(Flexible JSP, FJSP)においては,納期遅れ最小化の場合と同様に局所探索法の効率が低下するものの,納期遅れ最小化問題と異なり,仕事数および機械数が同程度のJSPと比較したとき,実行可能な解が大きく増加する.このため,既存のメタヒューリスティクスに割り付け規則を導入する場合に,局所探索法の効率を向上させるために時間窓を限定した局所的な割り付け規則を利用する方法の他に,局所探索法を開始する解を膨大な実効可能解から効率的に探索することを目的として,割り付け規則を解の全体に適用したうえで,効率的な規則を探索する方法が考えられる.これら2種の方法のうち,割り付け規則を解の全体に適用する後者の方法がより効果的であることを明らかとした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画における,①割り付け規則に用いる指標と有効性の検討,および,②割り付け規則による近傍の探索方法の検討に関して,スケジューリング問題の代表例たるジョブショップ問題(JSP)だけでなく,これをより複雑なものとした拡張JSPに対して行うことができた.一方で,各項目の詳細な検討については,困難な点が明らかとなった.①に関しては,既存の方法で用いられる割り付け規則は,経験的に定められたものであり議論の余地が残ると研究計画に記載した.しかし,問題の規模が変化した際に同一の規則を用いて柔軟に対応することの可能な指標が限られるため,既存の割り付け規則を上回る割り付け規則の指標を調査することが困難であることが明らかとなり,詳細な検討は行われなかった.一方で,拡張JSPに割り付け規則を適用する場合には,既存の割り付け指標にとどまらない新たな指標が必要とされ,こうした項目については十分な検討を行い,新たな割り付け規則を提案した.②に関しては,より良い割り付け近傍を探索することの可能な割り付け規則は,問題例によって様々に異なることが示唆され,有効な知見を得ることができなった.一方で,異なる拡張JSPの間において,それぞれ効率的となる方法を特定することができ,問題の性質と関連した知見を得ることができた.また,③多点探索を行うメタヒューリスティクスへの割り付け規則の導入に関しては,研究計画の通り実施することができた. 以上の研究状況から,拡張JSPに対する適用方法の検討が行われたことについて,当初の研究計画を上回る内容の知見が得られたものの,割り付け規則の適用方法にかかわる詳細部分の検討については,いくつかの課題が明らかとなり,当初の研究計画を完全に達成することはできなかった.こうした状況を総合的に判断し,表記の評価とした.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果から,当初の研究計画に記載されていた,①割り付け規則に用いる指標の有効性検討および,②割り付け規則に基づく局所探索法の検討について,問題の規模を限定しない,JSPの一般的な問題例に適用可能な知見を得ることが困難であることが示唆された.このため,次年度においては,ジョブショップ問題を対象として局所探索法を実施する際に有用と思われる知見として,有効な割り付け規則に関する知見に限定せず,一般的な局所探索法を適用する際の知見を対象とした研究を実施する予定である. 具体的には,局所探索法における近傍構造について,ジョブショップ問題の様々な問題例から,有効と思われる構造を特定する.一般的に,局所探索法を適用する際には,任意の解に対して微小な変更を加えることで得られる解の列挙と,得られた解の中からの最も目的関数値の良好な解への遷移を繰り返し行うことで良好な解が探索される.このとき,微小な変更により得られる解を近傍解とよび,こうした解は近傍構造にしたがって決定される.この近傍構造は,既存の方法においては,探索を行う研究者や技術者によって事前に決定され,探索効率の良い近傍構造を特定することが課題となっている.こうした状況に対して,ランダムに生成されたジョブショップ問題の複数の問題例を対象として,既存の局所探索法の適用過程において,遷移対象として選択された近傍解を特定し,その性質を機械学習などの方法により捉えることで,有効な近傍構造に関する知見を得ることを予定している.また,こうした知見を元に,複数の問題例を対象とした強化学習などを通して,より有望な近傍構造を学習し,一般的なJSPに対する知見を得ることを予定している.
|
Research Products
(1 results)