2015 Fiscal Year Annual Research Report
電波干渉計ALMAを用いた原始惑星系円盤の形成過程の解明
Project/Area Number |
15J01610
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大屋 瑶子 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 星・惑星系形成 / アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計 / 低質量原始星 / 原始星円盤 / 星間分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
原始星円盤とその母体のエンベロープガスについて、物理構造と化学組成の進化に関する観測的研究を行った。電波望遠鏡を用いた観測データの解析を、以下の若い太陽型 (低質量) 原始星について実施した。解析には主に、Atacama Large Millimeter/submillimeter Arrayによる観測データを用いた。 原始星コアL1527について、CS輝線の速度構造の解析から、この天体のエンベロープの幾何的構造が、従来報告されていた向きと逆向きであることを明らかにした。速度構造の解析のため、3次元の弾道モデルを作成し観測結果と比較した。また、アウトフローキャビティの壁の速度構造が、放物面モデルで再現されることを示した。以上の結果を学術論文として発表した (2015/8/31受理, Oya et al., 2015, ApJ, 812, 59)。 Class 0低質量連星IRAS 16293-2422のSource Aについて、エンベロープガスの落下と回転の運動が、OCSやH2CSの輝線によって捉えられることを示した。上記モデルとの比較から、原始星質量と比角運動量を評価した。このモデルでは、エネルギーと角運動量の保存のため、ガスは近日点 (`遠心力バリア') より内側には落下できない。遠心力バリア付近で複雑な有機分子(COMs)の輝線が強まることと、H2CSの輝線が遠心力バリア内側の円盤成分を捉えることを示し、バリア前後での化学組成の劇的な変化を明らかにした。さらに、エンベロープから円盤にかけてガスの回転温度の変化があることを示した。この結果をAstrophysical Journalに2016/1/28付で投稿した。 原始星コアL483についてCCHやCSの輝線がエンベロープを捉えることを示した。原始星近傍で、この天体では少ないとされているCOMsを検出し、円盤成分の存在が示唆されることを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、低質量星の進化過程の中で、収縮するエンベロープガスから原始惑星系円盤が形成されるまでの段階とそれに伴う物質進化を明らかにすることである。このためには、半統計的数の天体でのエンベロープと円盤の速度構造と化学組成の詳細な解析が不可欠である。 本研究では、若い低質量原始星IRAS 16293-2422 Source Aのエンベロープガスの速度構造が、落下しながら回転するガス円盤のモデルで説明されることを示した。このモデルについては、低質量原始星コアL1527のエンベロープの速度構造をよく再現することを報告している。これら二天体は、化学的特徴が互いに大きく異なることが知られている。この結果から、エンベロープガスの速度構造はその化学組成に依らず同一の物理構造で解釈できる可能性が示唆され、その統一的理解への手掛かりを示したといえる。またこの解析により、エンベロープガスの近日点 (`遠心力バリア') 付近で、物理的構造がその内側の円盤に向けて劇的に変化することを明らかにした。 原始星コアL483は、炭素鎖分子を豊富に含むwarm carbon chain chemistry (WCCC) の特徴をもつことが、原始星コアのスケール (数1000 AU) で報告されている。本研究では、この化学的特徴がより原始星に近い数100 AUスケールでも見られることを示した。さらに、数10 AUスケールの円盤成分の存在と、WCCC天体に乏しいとされるCOMsがそこに含まれることを示した。このことは、エンベロープから円盤への進化過程における物質進化を調べる鍵である。また上記三天体のいずれにおいても、遠心力バリア前後で劇的な化学組成の変化があることを示した。 以上のように本研究では、円盤形成に伴う物理的・化学的構造の劇的な変化を複数の天体で捉え、エンベロープから円盤への進化過程の体系的理解に向けた成果を上げている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、低質量原始星近傍の詳細な構造を調べるため、従来の望遠鏡に比べ飛躍的に高い空間分解能と感度をもつAtacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA) による観測データを解析している。現在までに得られているデータと採択された観測計画に加え、予定される観測公募に提案し、より詳細な構造の理解を目指す。ALMAへの観測提案のため、他の観測装置 (IRAM 30m, NRO 45m等) を用いた観測を推進する。また同時に、近年の観測によるアーカイブデータを活用することで、半統計的数の天体の構造解析を進める。とくに、本研究ではこれまでに、エンベロープから円盤に向けて物理的・化学的構造が劇的に変化する領域があることを示してきた。この領域での現象をより詳細に調べることで、円盤形成のメカニズムを明らかにする手掛かりとする。 観測データのより詳しい解釈のため、エンベロープモデルの改良を行う。流体力学シミュレーションや輻射輸送の効果を考慮することで、観測結果との定量的な比較を可能にする。このシミュレーションプログラムと観測との比較結果をフィードバックし、エンベロープから円盤までをつなぐモデルを構築・修正していく。 以上の研究結果から、エンベロープから円盤にかけての構造の普遍性と多様性を抽出する。発展させた計算機シミュレーションと併用し、原始星円盤の形成メカニズムの本質を探り、進化過程の体系的理解を目指す。
|
Research Products
(7 results)
-
-
[Journal Article] GEOMETRIC AND KINEMATIC STRUCTURE OF THE OUTFLOW/ENVELOPE SYSTEM OF L1527 REVEALED BY SUBARCSECOND-RESOLUTION OBSERVATION OF CS2015
Author(s)
Oya, Y., Sakai, N., Lefloch, B., Lopez-Sepulcre, A., Watanabe, Y., Ceccarelli, C., and Yamamoto, S.
-
Journal Title
Astrophysical Journal
Volume: 812
Pages: 59-70
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-
-
[Presentation] A drastic change in the disk forming regions2016
Author(s)
Yoko Oya, Nami Sakai, Yoshimasa Watanabe, Ana Lopez-Sepulcre, Satoshi Yamamoto, Yuri Aikawa, Tomoya Hirota, Takeshi Sakai, Cecilia Ceccarelli, Bertrand Lefloch
Organizer
Workshop on Astrochemistry in Star and Planet Formation
Place of Presentation
理化学研究所 (埼玉県和光市)
Year and Date
2016-02-16
Int'l Joint Research / Invited
-
-
-