2016 Fiscal Year Annual Research Report
電波干渉計ALMAを用いた原始惑星系円盤の形成過程の解明
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15J01610
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大屋 瑶子 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 星・惑星系形成 / アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計 / 低質量原始星 / 原始星円盤 / 星間分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
原始星円盤とその母体のエンベロープガスについて、物理構造と化学組成の進化に関する観測的研究を行った。アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計を用いた観測データの解析を、2つの若い太陽型 (低質量) 原始星について実施した。 Class 0低質量連星IRAS 16293-2422のSource Aについて、エンベロープガスの落下と回転の運動が、OCSなどの輝線で捉えられることを明らかにした。速度構造の解析のため、3次元の弾道モデルを作成し観測結果と比較した。このモデルでは、エネルギーと角運動量の保存のため、ガスは近日点 ('遠心力バリア') より内側には落下できない。モデルとの比較から、原始星質量とガスの比角運動量を評価した。また、遠心力バリア付近で複雑な有機分子 (COMs) の輝線が強まること、H2CS輝線がその内側の円盤成分を捉えることを示した。この天体はCOMs輝線が強く検出されるhot corinoとして知られているが、バリア前後でのこの劇的な化学組成の変化は、この天体の化学組成を特徴付ける一因とみられる。連星の他方であるSource Bについても、同様の化学組成の変化が見られることを確認した。 原始星コアL483について、CS輝線で捉えられた速度構造を解析し、上記モデルとの比較から物理パラメータを評価した。遠心力バリア内側の円盤とみられる成分に、COMsの輝線が集中して検出されることを明らかにした。この天体は不飽和炭素鎖分子を多く含むwarm carbon-chain chemistry (WCCC) の特徴を示す。WCCC天体でこのようなhot corino activityが空間的に分解されて確認されたのは初めてである。 以上の結果を学術論文として発表した (Oya et al., 2016, ApJ, 824, 88; 2017, ApJ, 837, 174)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、低質量星の進化過程の中で、収縮するエンベロープガスから原始惑星系円盤が形成されるまでの段階とそれに伴う物質進化を明らかにすることである。このためには、半統計的数の天体における、エンベロープガスと円盤の物理的・化学的な詳細解析が不可欠である。 本研究では、複数の若い低質量原始星で、数100 auスケールでのエンベロープガスの速度構造を明らかにした。落下しながら回転するガス円盤のモデルを作成し観測結果と比較することで、原始星質量とガスの比角運動量を評価した。これにより、化学的特徴が大きく異なる天体でも、エンベロープガスの速度構造は同一の物理構造で解釈される可能性を示唆し、その統一的理解への手掛かりを示している。また、エンベロープガスの近日点 ('遠心力バリア') の内側に高速で回転する円盤成分が存在することを示唆したことは、円盤形成の起源を探る一助になると期待される。さらに、バリアの前後で、ガスの化学組成が劇的に変化することを明らかにした。このことは、円盤形成に伴う物質進化を探る鍵である。 これらの解析の中で、S原子を含む分子が、遠心力バリア付近の速度構造と化学組成の変化をよく捉えることが示唆された。これを踏まえ、複数のhot corino天体に対するS関連分子のサーベイ観測を実施した。観測には野辺山45 m電波望遠鏡およびIRAM 30 m望遠鏡を用いた。この結果、幾つかの天体でOCSとH2CSの輝線が強く検出されることを明らかにした。これらの天体に対して、次年度4月に予定されるALMAの観測公募 (Cycle 5) に向けて、S関連分子の高分解能観測の提案を準備した。 以上のように本研究では、円盤形成に伴う物理的・化学的構造の変化を複数の天体で捉えている。統計的議論に向けた準備も進めており、エンベロープから円盤への進化過程の体系的理解に向けた成果を挙げている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、低質量原始星近傍の詳細な構造を調べるため、従来の望遠鏡に比べ飛躍的に高い空間分解能と感度をもつAtacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA) による観測データを解析している。現在までに得られているデータに加え、既に複数の観測計画が採択されている。これらに加えて、予定される観測公募に提案し、様々な天体についてのより詳細な構造の理解を目指す。ALMAへの観測提案のため、他の観測装置 (IRAM 30 m等) を用いた予備観測を推進している。ALMAの近年の観測によるアーカイブデータの活用も併せることで、半統計的数の天体の構造解析を進める。 本研究では、エンベロープガスから円盤への進化に伴い、物理的・化学的構造が劇的に変化することを示してきた。この現象をより詳細に調べることで、円盤形成のメカニズムを明らかにする手掛かりとする。とくに、複数の天体で捉えられている化学組成の変化を調べ、円盤形成に伴う物質進化の多様性を探る。このことは、惑星系形成の場である円盤の化学的な初期条件を明らかにする鍵になると期待される。一方円盤形成領域での速度構造は、天体の化学組成の違いによらず、本研究で作成した弾道モデルで解釈されることが示唆される。このことは、円盤形成のメカニズムの普遍性を探る一助になるとみられる。 以上の研究結果から、エンベロープから円盤にかけての構造の物理的・化学的な普遍性と多様性を抽出する。半統計的数の天体を調査することで、円盤形成のメカニズムの本質を探り、進化過程の体系的理解を目指す。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] L483: Warm Carbon-chain Chemistry Source Harboring Hot Corino Activity2017
Author(s)
Oya, Y., Sakai, N., Watanabe, Y., Higuchi, A.E., Hirota, T., Lopez-Sepulcre, A., Sakai, T., Aikawa, Y., Ceccarelli, C., Lefloch, B., Caux, E., Vastel, C., Kahane, C., and Yamamoto, S.
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Journal Title
Astrophysical Journal
Volume: 837
Pages: 174-188
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Infalling-Rotating Motion and Associated Chemical Change in the Envelope of IRAS 16293-2422 Source A Studied with ALMA2016
Author(s)
Oya, Y., Sakai, N., Lopez-Sepulcre, A., Watanabe, Y., Ceccarelli, C., Lefloch, B., Favre, C., and Yamamoto, S.
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Journal Title
Astrophysical Journal
Volume: 824
Pages: 88-106
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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