2016 Fiscal Year Annual Research Report
幹細胞マーカーEpCAMを用いた肝発癌モデルの樹立とゲノム/エピゲノム異常の解析
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15J01616
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹田 治彦 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / 癌幹細胞 / EpCAM / AID |
Outline of Annual Research Achievements |
肝癌は臨床的に極めて難治癌であるが、極めて難治たらしめている原因として癌幹細胞の存在が提唱されている。肝臓の幹細胞/前駆細胞や消化管上皮に存在するEpCAM陽性細胞にヒトの遺伝子編集酵素であるAIDを特異的に発現させることにより、消化器組織の幹細胞に遺伝子異常が生じることが肝癌を初めとする消化器癌の発癌につながるか否かを明らかにすることを目的として研究を進めてきた。 AIDにタモキシフェン(TAM)受容体であるERT2を結合したAID-ERT2コンストラクトを作成し、同配列をEpCAMプロモータ―の下流にknock inすることで、EpCAM発現細胞に特異的にAID-ERT2融合蛋白を発現するEpCAM-AID-ERT2マウスを作成した。TAM含有ペレットの経口投与法を選択し、投与開始後、投与中のみAIDが機能する、という実験系でTAM含有給餌を開始した。AIDの作用による発癌率の違いを検討するため、EpCAM-AID-ERT2マウスにTAM投与群、EpCAM-AID-ERT2マウスに通常餌投与群、野生型マウスにTAM投与群、とコントロールを設定し、それぞれ10-20匹ずつの経過観察を行ってきた。 EpCAM-AID-ERT2マウスにTAMを投与した群において、生後1年以内の死亡例が相次いで確認された。TAMの副作用としての肝障害や、肝腫瘍の発生などの可能性が考えられたため、生後1年での解剖を5例行ったが、いずれも肝臓を含む臓器に肉眼的腫瘍形成は確認できなかった。一方、TAM投与群は非投与群と比較して体重増加に乏しく、TAM投与により栄養状態や成長に影響が出ている可能性が示唆され、投与方法など、長期生存のための条件を再度検討している状況である。発癌までに72-90週を見込んでおり、引き続き経過観察を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで順調にマウスの交配がなされ、個体数を増やし、週齢を重ねている。一部のEpCAM-AID-ERT2マウスで48週、72週で解剖を行ったが、いずれも肝発癌は認めていない。ただし、これまでの発癌モデルマウスの検討から、当初の計画で発癌をきたすまでに72週以上必要と見込んでいるため、より長期の観察および多数例の解析が必要と考えられる。 また、タモキシフェンの投与により死亡率が上昇したことを受けて、隔週投与にするなどの投与方法調整を行っている。 引き続き経過観察を続け、三年目に各群での腫瘍発生率の違いに差が出るか、表現型の評価ができる予定である。腫瘍が認められれば、腫瘍組織を用いて、次世代シーケンサーを初めとしたゲノム解析、遺伝子発現解析へと進める予定とする。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのマウスモデルの報告から、本モデルについても腫瘍発生までに72-90週を見込んで計画を開始した一方で、タモキシフェンの経口投与を続けることにより、72週に達するまでに死亡するマウスが多数認められたことが、予想外であった。これを受けて、タモキシフェンの投与を連日投与から隔週投与にするなどの投与方法の調整を行い、長期経過観察可能な実験系に修正を加えることを検討中である。これまでの方法で72-90週に達する個体については計画通り腫瘍発生有無についての検討を行う予定である。薬剤誘導性に慢性肝炎刺激を加えることで肝腫瘍発生が促進されるかどうかも検討する。 腫瘍が見られれば、腫瘍組織からDNA, RNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いてゲノム解析、遺伝子発現解析へと進める予定である。
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