2015 Fiscal Year Annual Research Report
金属表面上に作製した2次元シリコン構造の反応性解明
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15J01628
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
牧野 隆正 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 表面反応 / 塩化メチル / シリコン / 銅 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの産業分野で使用されているシリコーンの原材料は、銅(Cu)を触媒に用いたシリコン(Si)と塩化メチル(CH3Cl)の直接反応により合成されているが、その機構の詳細はよくわかっていない。本研究ではCu表面に2次元Si構造を作製してその構造並びに反応性を評価し、また反応性についてCu-Si合金と比較することを目的としている。本年度はCuやSiそのものの反応性、そしてCu-Si合金の反応性の評価を行った。 1.Cu(410)表面にCH3Cl分子を吸着させてその吸着状態や反応性について調べた。CH3Cl分子はCl端で分子状吸着し、ステップエッジを優先的に占有することを見出した。そしてCu(410)面に吸着したCH3Cl分子の配向が被覆率に依存して変化することがわかった。低被覆率ではC-Cl軸を表面平行方向にしている分子と表面垂直方向にしている分子が共存しているが、被覆率の上昇に伴いC-Cl軸を表面垂直方向にしている分子のみが存在するようになる。また、CH3Cl分子の解離は観測されなかった。 2.SPring-8にて、Si(111)、Cu(111)やCu3SiとCH3Cl分子との反応を、Al Kα線を用いたX線光電子分光(XPS)により調べた。0.74 eV程度の並進エネルギーを持つ分子線を用いた場合、いずれの試料についても室温では反応が見られず、試料を加熱してもほとんど反応しなかった。一方で、3 eV程度の並進エネルギーを持つ分子線を用いると、室温のSi(111)試料に対してもCH3Clが反応することがわかった。そしてXPSスペクトルの変化から、初めは炭素と塩素の両方が吸着し、ある量を超えると炭素のみが吸着していくことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた、Cu単結晶表面上へのSi原子蒸着による2次元Si構造の作製とその表面構造解析は行えていないが、Cu、Si、およびCu-Si合金であるCu3SiとCH3Cl分子線との反応をX線光電子分光(XPS)で調べる予備実験を行うことができ、反応性に関して新たな情報が得られた。Cu単結晶表面上に作製した2次元Si構造とCH3Clとの反応性を理解し、また比較するのに必要となる情報が得られたため、このような評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
大型放射光施設SPring-8においてシンクロトロン放射光を用いたXPSにより、Cu、Si、およびCu3SiとCH3Cl分子線との反応を調べ、その反応性、CH3Cl分子の並進エネルギー依存性や基板温度依存性をより詳細に明らかにする。また当初の計画である、Cu単結晶表面へのSi原子蒸着による2次元Si構造の作製、そしてその構造や反応性の評価を行う。
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Research Products
(7 results)