2015 Fiscal Year Annual Research Report
XFELコヒーレント回折イメージングによる細胞周期依存的DNA核内分布の解明
Project/Area Number |
15J01707
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
関口 優希 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | コヒーレントX線回折イメージング / 位相回復 / 細胞核 / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、線自由電子レーザー(XFEL)を利用したコヒーレントX線回折イメージング(CXDI)により、これまで観察が困難であった、1マイクロメートル程度の出芽酵母細胞核子を「丸ごと」、「ありのまま」の姿で三次元的に可視化することを目的としている。様々な方向から集めた出芽酵母細胞核の投影像を使って三次元構造の再構成を行う必要があるため、大量のデータ測定が必須である。平成27年度は、(1)大量のXFEL施設SACLAにおける大量のデータ測定と、(2)高信頼度の解析を行うためのソフトウェア開発を通じて、(3)低分解能ながら出芽酵母細胞核の三次元構造を再構成した。 (1)研究室で開発された「高砂六号」という装置と、本年度に開発された大面積の試料保持薄膜により、XFEL施設SACLAにおけるデータ測定効率が向上し、試料に撃ちこむことの出来たパルスの総数が、21万(2015年3月)→31万(2015年7月)→194万(2016年2月)と順調に伸びていった。また、データ数が増えたため、過去に開発を行ったデータ処理ソフトウェアを改良し、処理速度を向上させた。 (2)このような膨大なデータから、試料の尤もらしい投影像を回復するべく、「阿修羅」というソフトウェアの開発を行った。このソフトウェアは、大量の投影像回復計算試行と多変量解析を組み合わせることで、より尤もらしい投影像を得るものである。このソフトウェアにより、膨大なデータの解析が相当に容易になった。 (3)2015年7月の実験で得られた1000枚程度の良好な回折パターンデータに「阿修羅」を適用することで、G2/M期に細胞周期を固定した出芽酵母核の投影像を約400得た。この投影像群に対し、電子顕微鏡分野で開発されたソフトウェアを適用することで、細胞核の三次元構造を有効分解能170ナノメートルで再構成することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
長らく問題になっていた、回折パターンデータから回復した投影像の正しさをどう評価するか、という困難に一定の指針を与えるソフトウェア「阿修羅」を早い内に開発できたため。また、この開発の成功が、計画であれば次年度行うはずであった三次元再構成を本年度中に低分解能ながら行うことを可能にしたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
出芽酵母細胞核の二次元投影像の分解能が100ナノメートル程度であっても、三次元再構成を行うと170ナノメートル程度の三次元分解能にしかならないということが判明した。これは、核の構造が170ナノメートル程度の分解能では共通であるが、それ以上細かい構造には個体差があることを示唆している。当初の目標は50ナノメートルの三次元分解能であったが、これを達成するためには、更に大量にデータを集め、分解能が高い投影像を多数得た後、構造の多様性を考慮した三次元再構成を行う必要がある。すなわち、構造が似た個体同士からの二次元投影像を集め、少しずつ異なる構造毎に三次元再構成を行う。これを実現するべく、電子顕微鏡ソフトウェアの活用や、構造分類手法の検討を行っていく。
|
Research Products
(8 results)