2015 Fiscal Year Annual Research Report
ミスマッチ修復機構がクロマチン複製と協調する機構の解明
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15J01767
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
照井 利輝 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ミスマッチ修復 / クロマチン |
Outline of Annual Research Achievements |
ミスマッチ修復(MMR)はDNA合成エラーを修復し突然変異を抑制している、遺伝情報の安定維持に重要な機構である。真核生物のDNAは複製の直後からクロマチン構造をとるため、様々なDNA上での反応にはクロマチン構造の動態を制御する因子が重要な機能を持つ。しかし、MMRに機能するクロマチン関連因子は全く分かっておらず、クロマチン上でMMRが機能する仕組みは明らかになっていない。 本研究はクロマチン上でMMRが機能する仕組みの解明を目的に、ツメガエル卵核質抽出液(NPE)を用いて、ミスマッチ塩基対の周辺でヌクレオソームが排除されること、クロマチンリモデリング因子Smarcad1、ヒストンシャペロンFACTがこの反応を促進することを見出してきた。これらの因子が実際に生体内においてもクロマチン動態を制御することでMMRを促進しているのかを知るため、出芽酵母を用いて自然突然変異頻度の計測を行った。出芽酵母のSmarcad1ホモログであるFUN30を欠失させると、複数の遺伝子座で突然変異頻度の上昇が見られた。さらに、msh3Δやmsh6ΔといったMMRの活性が部分的に低下している株からFUN30を欠失させると特に顕著に突然変異頻度が上昇した。この結果はFun30がMMR機構と協調的に機能し、突然変異を抑制することを示唆する。このFUN30の欠失による突然変異頻度の上昇は、ヌクレオソーム形成活性が低下するcac1Δ株では抑えられた。これらの結果はFun30がヌクレオソーム排除を促進することで生体内のMMR効率を高めるということを強く示唆する。本研究により、生体内のMMRを促進するクロマチンリモデリング因子が初めて明らかになり、MMRがクロマチン動態を制御しながら進行することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ツメガエル卵核質抽出液を用いることで、MMRが起きるときのクロマチン動態の変化とそこに関わる因子を明らかにした。さらに、この試験管内系で見出した発見を、出芽酵母を用いた生体内のモデル系に適用することで、生理学的意義を示すことができた。生化学的な解析を進め、反応の詳細な分子機構を明らかにすることが今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
出芽酵母を用いた解析により、ヌクレオソーム排除反応が、生体内のMMRに重要な役割をもつことが明らかにできた。今後は、精製タンパク質を用いてヌクレオソーム排除反応を試験管内再構成し、Smarcad1やFACTがどのようにMMR因子と協調的に機能し、ヌクレオソーム排除を起こしているのか、どのようにしてMMRの反応を促進しているのか、詳細な分子機構を明らかにしていく。さらに、この試験管内系で明らかにした結果をもとに、出芽酵母の各種変異体を作成し、生体内のMMRへの重要性も明らかにしていく。
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