2015 Fiscal Year Annual Research Report
磁場可変固体高分解能NMRを用いた無機材料・表面・界面の電子状態の解析法の実現
Project/Area Number |
15J01779
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
一条 直規 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 磁場可変NMR / 核四極子相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で開発する磁場可変固体高分解能NMRを用いた電子状態の解析法を実際の無機材料に適用するためには、原子核の四極子相互作用が非常に大きく、ゼーマン相互作用の摂動として取り扱うことのできない領域でのNMR測定が不可欠であると考えられる。このような領域は、①NMRの共鳴線が、検出回路の帯域幅を大きく上回るほど広幅化することと、②摂動法が使えないためスペクトルの解析が困難であることの2点により、NMRの歴史上ずっと忌避され続けてきた。本年度はまず、このような領域におけるNMRの可能性を探るべく、主に理論的な研究を実施した。 本研究で開発する新手法においては、周波数を固定し磁場強度を変えて測定を行うため、スペクトル全体を分割して取得し、その後でつなぎ合わせることが容易であり、①の問題は解決される。②の問題を軽減するために新手法では、共鳴線全体の強度を解析する従来の一般的な方法ではなく、共鳴線の形状を最も特徴付ける特異点(鋭く尖ったところ)の位置のみを解析に用いるという方策をとることにした。 申請者は、系を記述するハミルトニアンを精察することにより、粉末試料のうち、ある決まった向きの微結晶は、四極子相互作用のパラメータによらず、必ず特異点で共鳴するということを導き出した。このことを用いると、従来法より簡便に四極子パラメータを決定することができるという点で非常に有用な理論であるばかりでなく、NMR分光の適用範囲を拡げるという大きな意味も持っている。申請者は現在、実際の系を対象に数値計算を行い、理論を実証しているところであり、また同時に、論文にまとめ学術誌に投稿する準備を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
四極子相互作用が非常に大きいためにこれまでNMRによって物質の化学的な情報がほとんど得られてこなかった核に対して、実験で観測された粉末線形の特異点の位置から四極子相互作用のパラメータを決定できることを示した本研究は、この分野にとって大きな前進であり、期待以上の研究の進展があったといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、初年度に開発した方法を実材料に適用し、解析を行う。 また、四極子相互作用だけでなく化学シフト相互作用も同時に働いている場合のスペクトル解析法を開発する。
|
Research Products
(1 results)