2015 Fiscal Year Annual Research Report
大学生におけるライフスキルと攻撃性および精神的健康との関連
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15J01794
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
嘉瀬 貴祥 立教大学, コミュニティ福祉学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ライフスキル / 攻撃性 / 精神的健康 / 大学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.攻撃性と精神的健康の関連(嘉瀬ほか, 2015):攻撃性を含んだより包括的な精神的健康のリスク要因であるタイプA行動様式(以下,タイプAと略記)と,ストレス対処能力である首尾一貫感覚(SOC)が大学生の精神的健康に与える効果を検討した。大学生の調査データを分析した結果,攻撃性はタイプAのなかでも精神的健康に対して強い負の関連を持つ要因であること, SOCは攻撃性が高い場合でも抑うつ傾向を低減する効果を持つことが示唆された。SOCとライフスキルは類似した機能を持つ要因であることから,ライフスキルを高めることで,攻撃性が高い者でも精神的健康の維持や増進が可能となると推察された。 2.ライフスキルにおける性差や個人差(嘉瀬ほか, 2015;嘉瀬ほか, 印刷中):(1) 調査データを分析した結果,ライフフスキルの特徴によって大学生は5つグループに分類され,それぞれのグループの精神的健康の状態は異なることが示された。これらのグループはライフスキルにおける個人差や性差を示すとともに,ライフスキルのトレーニング実施時に考慮すべき差異を示していた。(2) 高いSOCを有する者のライフスキルの特徴を検討した。大学生の調査データを分析した結果,SOCの高い者はライフスキルが高く,より効果的にストレスへ対処し精神的健康を高めるように構造化されたライフスキルを有していることが示唆された。この結果より,ライフスキルの構造化を意識したプログラムの実施が効果的であると示唆された。 3.青年成人に求められるライフスキルの抽出(嘉瀬ほか, 印刷中):測定尺度の作成を目的として,大学生を含む青年や成人に求められるライフスキルを検討した。自由記述調査のデータを分析した結果,中核的・特徴的なライフスキルを示す40の要因が抽出された。これらは現代社会生活に必要な要因であると推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は「大学生における攻撃性やライフスキルが精神的健康に影響する過程の検討と,ライフスキル測定尺度の再検討を行う」という研究計画に沿い,大学生におけるライフスキルと攻撃性および精神的健康の関連について,1.攻撃性と精神的健康の関連についての詳細な検討,2.ライフスキルにおける性差や個人差の検討,3.日本人青年と成人に求められるライフスキルの抽出と測定尺度の作成を主として行った。平成27年度内に測定尺度の作成に取り掛かることができたことからも,研究計画は順調に遂行されていると考えられる。また研究成果をふりかえると,筆頭として取り組んだ研究については,受理された投稿論文が4件,学会発表が3件という業績を残した。論文についてはすべて査読有りの専門誌への投稿であり,受理されている。また投稿論文や学会発表のなかには,先行研究例の希少な調査・分析手法を用いた非常に新規性の高い内容であると評価された業績もある。これらのことから,平成27年度は研究計画以上の成果を上げることができたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に得られた研究成果より,攻撃性と精神的健康(抑うつ傾向)の関連の検証,大学生を含む日本人青年と成人のライフスキルの把握,ライフスキルにおける個人差や性差の検討といった平成27年度の課題は解決されたと考えられる。また現在,本研究課題の主要な目的の一つであるライフスキルの測定尺度の作成に関する論文を投稿中である。平成28年度はこの測定尺度の作成を用いて,ライフスキルと攻撃性および精神的健康との総合的な関連性について,総合的に検討していくことが求められる。現在,本研究で作成される測定尺度を用いた量的調査(集合調査・インターネット調査)の計画を検討中である。平成28年度はこの調査の実施と調査データの分析を進め,本研究課題全体の目的である,ライフスキルの向上と大学生の攻撃性および精神的健康との関連の解明と,その結果より大学生の精神的健康に関する一次予防策の検討の達成へ向け,研究計画に沿った形で推進する予定である。
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Research Products
(8 results)