2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J01805
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田鍋 友紀 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 走化性 / 興奮性 / イメージング / 細胞性粘菌 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞性粘菌の走化性ではPI3K経路をはじめ、TorC経路やsGC経路など複数のシグナル伝達経路によって調節されていることが知られている。一般に真核生物の走化性は、複数のシグナル伝達分子の局在によって調節されているが、その生物学的意義は分かっていない。本研究ではPI3K経路とsGC経路を同時観察して、その分子局在の時空間的性質を比較することで経路ごとの機能を明らかにする。それとともに数理解析を通して、複数経路があることで走化性にどのような利点が生まれるのか明らかにすることを目的としている。 ライブイメージングによって、細胞が仮足を形成するときのsGC経路とPI3K経路のシグナル分子局在は、時間的・空間的に異なることが明らかになった。時間的な性質としては、PI3K経路に比べてsGC経路の方がより速いダイナミクスをもっており、頻度の高い局在を示した。空間的には同じ仮足に2つの分子が局在した時でも、PI3K経路の分子の方がより仮足前端に局在しておりsGC経路の分子は少し後ろに局在を示した。また、統計的な解析により細胞が形成する仮足は、sGC経路の分子のみが局在を示す仮足と、sGC経路とPI3K経路の分子が両方局在する仮足の2パターンに分類できることが分かった。2種類の仮足では伸長距離が異なっており、sGC経路とPI3K経路両方の分子が局在した仮足が2倍ほど大きく伸長した。これらの結果は、sGC経路とPI3K経路では仮足形成への寄与が異なっている事を示唆している。sGC経路は頻繁な仮足形成を促進し、PI3K経路が限定された仮足のみを大きく伸長させることで効率の良い走化性が果たされているかもしれない。 今後、結合振動子として複数経路を数理モデル化し、効率の良い走化性を果たすために重要な反応を推定していく計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
sGC経路とPI3K経路の分子局在に関するパラメータ測定を予定通りに行った。その結果、sGC経路とPI3K経路では分子局在の時空間的性質が異なっている事が明らかとなり、2つの経路では役割が異なる事も示唆された。研究当初は、sGC経路とPI3K経路のそれぞれの経路の遺伝子破壊株を用いることで経路間の相互作用について詳しく解析できると考えていたが、劇的な変化は見られておらず、相互作用の推定には至っていない。しかし、蛍の集団発行などを表した結合振動子モデルでは振動子間の相互作用が小さい場合に生物らしい現象をよく表現できている。よって、より詳細な計測・解析を行って弱い相互作用があるかどうか明らかにしていく。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した通り、今後は複数経路の分子局在を結合振動子として数理モデル化を行う予定である。実験的には相互作用の推定と並行して、数理モデルではまず相互作用のない場合のシミュレーションを行う。相互作用の大きさが求められたら、モデルに組み込んでパラメータの細かい調整を行っていく予定である。実験的に明らかになった現象の再現を行うとともに、いくつかのパラメータを野生型の値から変更したときの走化性効率を評価することで、効率の良い走化性に重要な反応を推定できると考えている。
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Research Products
(2 results)