2016 Fiscal Year Annual Research Report
難民間におけるコミュニティ形成に果たす学校の役割―シリア難民の事例―
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15J01815
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 香 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | シリア難民 / トルコ / 学校教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、難民によるコミュニティ形成に果たす学校の役割を検討することである。2016年度は、先行研究の検討と前年度までの現地調査を総括して、特に難民が持つ多様性、多面性、動性に着目しながら、難民が運営する学校がコミュニティにもたらす連帯と分断について明らかにした。 これまで難民が運営する学校は、公教育の代替機関・準備拠点として扱われてきた。しかし近年、キャンプ外に住む難民が60%を超え、難民生活が多様化し自律的になる中で、難民が運営する学校に対するニーズは高まっている。これに対して本研究は、シリア人学校12校での質的調査を通して、学校内部の当事者の視点から、シリア人学校がコミュニティにおいて果たす役割について考察を加えた。 シリア人学校は、学校を中心としたコミュニティを形成し、難民の生活基盤の一部を構築している。その活動は、学校設立当初はシリア難民の自発的意志と活動に支えられていたが、近年ではトルコ政府等の政治的なアクターと結びつくことで、子どもへの卒業資格の提供などの機能が強化されてきた。しかし一方で、トルコ政府や外部の援助者など多様なアクターが加わることにより、関係者間の連帯のもと構築されてきたシリア人学校では、内外に分断も生じてきた。 しかし、シリア人学校は、シリア本国において紛争前から政府や慣習による抑圧を受けてきた人びとにとって、その文脈から脱却し難民となったことで得た自由を体現する場となっている。また、難民経験がもたらした無力感や喪失感に苛まれる教師らは、シリア人学校の発展や教育活動をとおして、貢献感を獲得し、難民経験の補償を得ている。彼らにとってシリア人学校は、生産性と有能性を証明する源となっている。こうした不可視の機能は、シリア人学校が、シリア難民の連帯のもと発展してきたからこそ生じるものであり、今ではそのコミュニティを維持する原動力ともなっている。
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Research Progress Status |
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(6 results)