2015 Fiscal Year Annual Research Report
ゼブラフィッシュ卵成熟過程におけるサイクリンB1 mRNA翻訳制御機構の解析
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15J01844
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 一樹 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 翻訳制御 / mRNA輸送 / 卵成熟 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゼブラフィッシュの卵成熟には,翻訳を抑制された状態で蓄えられたサイクリンB1 mRNAがホルモンの刺激に応答して翻訳を活性化されることが必要である。本研究では,卵成熟過程におけるサイクリンB1 mRNAの翻訳制御機構を明らかにすることを目的とし,次の(1)~(3)の研究を行なった。 (1)「新規翻訳制御タンパク質IMP3に関する解析」では,サイクリンB1 mRNAの翻訳制御因子の候補として同定したIMP3について,ノックアウトによる機能解析とシス配列の同定を行なった。現在はさらなる機能解析のため,コンディショナルノックアウトの作出にとりかかっている。 (2)「サイクリンB1 mRNAタンパク質コード領域(ORF)中のシス配列による翻訳制御機構の解析」では,シス配列に結合する翻訳制御タンパク質の探索を行なった。 ゼブラフィッシュ卵母細胞において,サイクリンB1 mRNAは動物極直下の細胞質に局在化した状態で蓄積されている。先行研究から,サイクリンB1 mRNAの局在化は翻訳の制御と密接に関連していることが明らかとなっている。しかしながら,その局在化の機構については明らかとなっておらず,サイクリンB1 mRNAの翻訳制御機構の包括的な理解のためには,サイクリンB1 mRNAの輸送メカニズムに関する解析が必要である。 (3)「サイクリンB1 mRNAの輸送に関する解析」ではサイクリンB1 mRNAの輸送を担うタンパク質の候補を同定し,機能解析を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)新規翻訳制御タンパク質IMP3に関する解析 本研究ではサイクリンB1 mRNAの3' UTR中にあるとみられるIMP3結合配列の同定のため,UVクロスリンク法とゲルシフト法による解析を進めていたが,現在までその同定には至っていない。IMP3中に6つあるRNA結合ドメインによるRNAプローブへの非特異的な結合が原因であると考えられ,実験のさらなる条件検討が必要である。CRISPR/Cas9によりIMP3のノックアウトゼブラフィッシュを作成した結果,発生に重篤な影響が生じ卵母細胞における解析はできなかった。IMP3は卵母細胞におけるサイクリンB1 mRNAの翻訳制御のみならず,発生を司るmRNAの翻訳にも関与していることが推察される。 (2)サイクリンB1 mRNAタンパク質コード領域(ORF)中のシス配列による翻訳制御機構の解析 シス配列に結合する翻訳制御タンパク質同定のため,ビオチン化したプローブを用いたプルダウン実験を行なった。しかしシス配列に変異を導入したコントロールとの間に有意な差はみられず,同定は難航している。 (3)サイクリンB1 mRNAの輸送に関する解析 本研究では,先行研究よりIMP3と協働してmRNAの輸送に関与するとされるStaufen1に着目して解析を行なっている。現在までに,Staufen1は,1) サイクリンB1 mRNAが輸送されるより以前から一定して発現している,2) 未成熟卵においてサイクリンB1 mRNAに結合している,3) 未成熟卵においてサイクリンB1 mRNAと共局在している,4) IMP3とはmRNAを介して結合していることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)新規翻訳制御タンパク質IMP3に関する解析 CRISPR/Cas9とCre/loxPを用いたコンディショナルノックアウトゼブラフィッシュの作成を進め,サイクリンB1 mRNAの翻訳制御におけるIMP3の重要性について検証を行なう。ノックアウトの結果,有意な結果が得られた場合はシス配列の同定について実験系の条件検討を行なう。 (2)サイクリンB1 mRNAタンパク質コード領域(ORF)中のシス配列による翻訳制御機構の解析 今回,実験に用いたプローブが短かったことが主な失敗の原因であると考え,より長いプローブの使用を検討する。この場合,ビオチン化プローブの合成に多額の費用がかかるため,ビオチンの代わりにストレプトアビジンに結合するRNAアプタマー(S1m)を用いる。 (3)サイクリンB1 mRNAの輸送に関する解析 本研究は(1)より派生した研究で,当初の予定にはなかったものではあるが,もっとも進展の可能性が高い研究であり,今後も輸送の鍵タンパク質とみられるStaufen1についてより詳細な解析を行なう。特に,Staufen1は標的のmRNAと微小管モータータンパク質であるKinesin1の両者に結合することで,mRNAの輸送を担っているとされる。この点をふまえ,サイクリンB1 mRNAの輸送におけるKinesin1や,卵母細胞内における微小管ネットワークに着目した解析を行なう予定である。
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Research Products
(3 results)