2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15J01910
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
黒田 翔 筑波大学, システム情報工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 市場の厚み / 賃貸住宅市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度はミクロ取引における「市場の厚み効果」の実証に取り組んだ.この効果はNgai and Tenreyro (2015, AER)において物件数(厚み)の変動と取引確率や成約価格の関係を数理的に記述した理論研究で用いられたものであり,サーチのフレームにおいて厚みがマッチの質に影響するというこの効果が仮定されている.しかしながらこの効果の存在と程度を実証的に明らかにした研究は十分でない.このトピックは平成27年度(採用初年度)のサーベイによって明らかになった研究課題の一つであり,平成28年度は厳密な分析に先立つラフ分析を行った.はじめに東京都区部における賃貸住宅仲介のデータベースから賃貸取引の時点,地点,賃料と当該物件属性のデータセットを整備し,これを用いて市場の厚みとマッチの質の間の関係を定量的に明らかにした.本来この厚み効果は量変数の相関ではなく因果を意味するのものであるが,本年度は量変数の相関関係を記述するにとどまっている.研究成果は第30回応用地域学会神戸大会で口頭発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
市場取引データの整備と分析に着手しているが,複雑な家計の意思決定を十分に反映した計量モデルの特定化が難航しており,本来望ましい構造モデルではなく誘導型での推定にとどまっている.さらに計画書において当初計画していた複数階層にわたるデータ単位の融合部分を計量モデル上に導入することは未着手である.
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Strategy for Future Research Activity |
よりバイアスの小さい推定のためにいわゆる準実験アプローチによる識別を試みる.また当初の計画で含まれていた複数レベルの経済活動とデータの融合的分析についても本研究課題の採用期間中の発展を目指し,主に工学的なアプローチによるモデリングを目指す.
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