2015 Fiscal Year Annual Research Report
短波長可視光照射による昆虫に対する殺虫メカニズムの解明とその利用に関する研究
Project/Area Number |
15J01933
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渋谷 和樹 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 短波長可視光 / 殺虫 / キイロショウジョウバエ / 太陽光 |
Outline of Annual Research Achievements |
実験系を確立し、回復波長の探索に先立って殺虫効果の評価を行った。人工太陽灯を用いて400~500 nmの波長光をキイロショウジョウバエ蛹に照射したところ、高い殺虫効果が認められた。これより、先行研究で用いたLED以外の照明でも殺虫効果が示されたことになる。すなわち、光照射による殺虫効果は照明の種類に依存するものではなく、照射されている波長(短波長可視光)によるものであることが証明された。このことから、太陽光中に含まれる短波長光によっても昆虫は致死するものと考えられる。 また、複数波長を同時に照射することによる協力作用も見出した。先行研究ではLEDを用いて単独の波長を照射し、波長ごとに殺虫効果を評価していた。これに対して本研究では、400~500 nmという広い波長範囲の光を同時に照射して殺虫効果を評価した。その結果、単独照射では殺虫効果が低い波長でも、他の波長と同時に照射することで殺虫効果が上昇することが分かった。すなわち、先行研究において殺虫効果が低い、もしくは存在しないと評価した波長も、太陽光中では協力作用によって殺虫効果の一部を担っている可能性がある。これは光照射による殺虫効果についての新しい知見であり、太陽光中の殺虫・回復波長を評価していくうえで重要な基礎的データといえる。 また、複数波長の同時照射による回復効果について、予備的な検討を行った。400~500 nm照射区と400~750 nm照射区を比較した結果、ともに99%以上の殺虫率を示した。このことから、短波長光と長波長光の同時照射による回復効果は低い、もしくは無い可能性が見いだされつつあるが、今後の詳細な調査を要する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光照射による殺虫効果が照明の種類に依存せず、特定の光波長によることを証明し、太陽光中の短波長可視光にも殺虫作用があることを見出した。さらに、これまで明らかにされていなかった複数波長の同時照射による協力作用を明らかにした。回復波長については厳密な特定まで至っていないが、短波長可視光との同時照射による回復効果は低いという可能性を見出した。以上の結果は、太陽光中における波長間の相互作用や昆虫の生存戦略を明らかにするうえで極めて重要な知見であるといえる。よっておおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
回復波長の有無を詳細に調査する。短波長光と長波長光の同時照射、または交互照射によって回復効果を詳細に評価し、その波長範囲を特定する。 また、殺虫効果の協力作用についても調査を進める。先行研究において殺虫効果が極めて低いとされてきた波長(例えば404 nmなど)について、太陽光中でどの程度殺虫効果に寄与しているかを調査する。
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Research Products
(10 results)