2015 Fiscal Year Annual Research Report
<鳥類での化学物質による腎障害メカニズムの解明と腎障害バイオマーカーの探索>
Project/Area Number |
15J01937
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石井 千尋 北海道大学, 獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 鳥類 / 腎障害マーカー / 糖鎖解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
鳥類において腎障害を引き起こす化学物質は数多いが、鳥類特有の複雑な腎臓構造のために腎障害評価は非常に難しい。そこで、本研究では鳥類において有用な腎障害バイオマーカーの探索と腎障害診断キットの開発を目的とした。 ニワトリへのジクロフェナク投与により腎障害モデルを作成し、血液検査、各種組織の病理検査結果から腎臓特異的な障害を持つ個体を判断した後、これらの血漿を糖鎖解析に、腎臓をマイクロアレイ解析に使用した。糖鎖解析はGlycoblotting法により行い、各糖鎖発現量と病理検査による腎障害スコアの相関関係から腎障害マーカー候補糖鎖を同定した。ニワトリにおいては38種類の糖鎖が検出され、約半数の糖鎖においてジクロフェナク投与により発現増加、または減少が認められた。特にシアリル化され、かつフコシル化されていないという特徴を持った糖鎖が増加傾向にあり、このうち数種の糖鎖はヒトにおける腎癌で同様に発現上昇が認められているため、鳥類でも種を問わず腎障害を反映する可能性が高い。 遺伝子発現を網羅的に分析するマイクロアレイ解析では、腎障害個体においてコントロール個体よりも発現量が100倍以上増加した遺伝子が約80個認められた。今後は、高濃度において腎障害作用を持つ抗悪性腫瘍薬であるシスプラチンの投与による腎障害モデルを作成し、これらのマイクロアレイ解析結果と合わせて腎障害に対応する遺伝子を絞り込み、マーカーとして利用できる遺伝子を探る。また、両投与群における糖鎖解析・マイクロアレイ解析の結果から糖鎖変動に関連する遺伝子の特定を試みる。ニワトリでの腎マーカー候補を確定させた後、多種鳥類の血漿、また死亡個体の腎臓を分析し、鳥類種網羅的に使用可能な腎障害マーカーの探索を行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニワトリにおいて腎障害モデルを作成する際に、まず同一種類のニワトリを注文できるタイミングが年に3度しかなく、注文してからの孵化・飼育であったために投与実験開始までに時間がかかってしまった。又、ニワトリにおいてジクロフェナクへの感受性が個体により著しく異なったため、投与実験の条件検討に時間が必要だった。しかしながら、モデルニワトリの作成に成功した後は、病理検査、糖鎖解析と問題なく進み、目的である腎障害マーカー候補物質も検出できたことと、今後の明確な実験プランも立ったため、総合的にはおおむね順調だと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、高濃度において腎障害作用を持つ抗悪性腫瘍薬であるシスプラチンの投与によって異なる腎障害モデルニワトリを作成する。ジクロフェナク投与群と同様に血液検査、病理検査を行い腎特異的な障害であることを確認したのち、糖鎖解析とマイクロアレイ解析を行う。 その後、シスプラチン投与群とこれまでに投与実験が終了したジクロフェナク投与群のマイクロアレイ解析結果を合わせ、腎障害に対応する遺伝子を絞り込み、マーカーとして利用できる遺伝子を探る。また、両投与群における糖鎖解析・マイクロアレイ解析の結果から糖鎖変動に関連する遺伝子の特定を試みる。ニワトリでの腎マーカー候補を確定させた後、多種鳥類の血漿、また死亡個体の腎臓を分析し、鳥類種網羅的に使用可能な腎障害マーカーの探索を行う。その後、希少鳥類種保全現場や動物病院での使用に向けて、多種の鳥類を対象に臨床応用可能な腎障害診断簡易キットの開発を目指す。
|
Research Products
(6 results)
-
[Presentation] Creating a model of renal damage in chicken and glycomic approach to identify novel biomarkers for kidney injury in birds2016
Author(s)
Chihiro Ishii, Yoshinori Ikenaka, Osamu Ichii, Shouta M.M. Nakayama, Shin-Ichiro Nishimura, Tetsu Ohashi, Masakazu Tanaka, Keisuke Saito, Yukiko Watanabe, Hazuki Mizukawa, Mayumi Ishizuka
Organizer
8th International Toxicology Symposium
Place of Presentation
Egypt, Giza, Gawharet Alahram Hotel
Year and Date
2016-08-30 – 2016-08-31
Invited
-
[Presentation] Lead poisoning and distribution in raptors' bones and bone marrows2015
Author(s)
Chihiro Ishii, Shouta M.M. Nakayama, Yoshinori Ikenaka, Hokuto Nakata, Keisuke Saito, Yukiko Watanabe, Ayuko Morita, Hazuki Mizukawa, Shinsuke Tanabe, Kei Nomiyama, Terutake Hayashi, Mayumi Ishizuka
Organizer
The 3rd Sapporo Summer Seminar for One Health
Place of Presentation
北海道札幌市、北海道大学獣医学研究科
Year and Date
2015-09-16 – 2015-09-17
Int'l Joint Research
-
[Presentation] Lead poisoning and source identification in raptors from Japan2015
Author(s)
Chihiro Ishii, Shouta M.M. Nakayama, Yoshinori Ikenaka, Hazuki Mizukawa, John Yabe, Yared B. Yohanness, Hokuto Nakata, Keisuke Saito, Yukiko Watanabe, Shinsuke Tanabe, Kei Nomiyama, Terutake Hayashi, Yasushi Masuda, Kentaro Q. Sakamoto, Mayumi Ishizuka
Organizer
Vth International Wildlife Management Congress
Place of Presentation
北海道札幌市、札幌コンベンションセンター
Year and Date
2015-07-26 – 2015-07-30
Int'l Joint Research
-
-
-