2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J01948
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
下村 信一朗 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 高分子スキャホールド / 細胞接着 / 力学特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
組織工学や再生医療分野で用いられる高分子スキャホールドの構造・物性は、生体組織の多くを構成する細胞の様々な挙動と密接に関わっている。近年、とりわけ高分子スキャホールドの力学物性が因子として注目を集めている。本研究では、これまでに、ガラス状高分子の界面力学特性に着目し、細胞挙動に影響を及ぼすことを明らかにしている。本研究では、高分子の界面力学特性をキーワードとした新規スキャホールドの創製に着目し、ポリスチレン(PS)薄膜表面の力学特性を2次元に配向させ、細胞挙動を2次元力学パターンに基づき制御することを目的とした。 PS薄膜をラインアンドスペース(L&S)パターン上に調製したPS/L&Sスキャホールドを作製した。PS膜の下層にはパターンの凸部と凹部である空洞が交互に並んでいることを考慮すると、PS表面は力学的に安定な領域と不安定な領域が2次元にパターン化されているとみなせる。このようなスキャホールドを用いて、線維芽細胞の接着、伸展および増殖挙動を光学顕微鏡観察に基づき評価した結果、PSの膜厚が400 nm以下の場合において、細胞の挙動が膜下層のパターンに依存することを明らかにしている。これらの結果は、細胞挙動がPS膜の薄化により誘起される膜の2次元力学パターンに強く依存することを意味する。 本研究で得られた成果は、高分子薄膜の界面力学特性に基づく細胞機能制御の可能性を秘めており、その意義は極めて大きく、また、再生医療に資する新規スキャホールドの設計指針に繋がることから非常に重要であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、当初の計画予定どおり高分子の力学不安定性に基づく細胞機能制御を達成しつつあり、おおむね順調に進んでいると評価する。本研究で得られた成果は、既に国際学会を含め複数回の学会発表を行っており、現在トップジャーナルを目指し論文執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
高分子薄膜の界面力学特性に基づく細胞機能制御の可能性を見出したが、その詳細なメカニズムは未解明である。現在、蛍光免疫染色に基づく細胞の接着状態および骨格形成状態の評価を行っており、また、有限要素法に基づく力学シミュレーションを検討しており、メカニズム解明を目指している。
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Research Products
(3 results)