2015 Fiscal Year Annual Research Report
太陽系外地球型水惑星の表層環境進化に関する理論的研究
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15J01965
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
門屋 辰太郎 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 系外惑星 / ハビタブルゾーン / 炭素循環 / 気候進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,惑星の熱進化に伴うCO2脱ガス率の変化と,中心星の光度進化に基づいて,地球型水惑星の気候進化,特に地球型水惑星がハビタブルである継続期間を明らかにすることである.本年度は,惑星や中心星の質量の違いが地球型水惑星の気候進化に与える影響を検討した. 様々な質量を持つ惑星を仮定し,CO2脱ガス率進化の惑星質量に対する依存性や気候進化に対するその影響を検討した.大きな惑星は同年齢の小さな惑星に比べて,マントルの平均温度は高く,CO2脱ガス率も大きい.しかし,同時に惑星の表面積も大きいため,単位地表面積あたりのCO2脱ガス率は,惑星質量にあまり依存しない.このため,気候進化や惑星がハビタブルである期間に対して惑星質量が与える影響は,海陸比など他の要素が与える影響に比べて,小さいということがわかった.次に,中心星質量に対する依存性を検討した.小さな星は大きな星に比べて,数が多く,また光度進化も遅い.このため,継続的にハビタブルである惑星は小さな星の周りに多く存在すると,従来は予想されてきた.しかし,ハビタブルゾーンに存在する惑星の気候はCO2脱ガス率からも制約を受けており,CO2脱ガス率の進化は中心星の影響を受けない.このため,特にハビタブルゾーン外縁部では,中心星質量に依存せず30億年程度で,地球型水惑星が全球凍結することがわかった.言い換えれば,地球型水惑星がハビタブルである期間の中心星質量に対する依存性も小さいため,小さな星が継続的にハビタブルである惑星の主星として有利であるとは必ずしも言えない,ということである.こうした成果から,今後の観測においてハビタブルな惑星を観測するためには,まず若い恒星系に注目することが重要であると強く示唆される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主要な目標は,系外惑星の気候進化に対する惑星質量の影響を推定することであった.本年度は,こうした目標に加え,中心星質量の違いが与える影響についても考察を深めることができた.こうした研究の一部を学術論文として出版しており,さらにもう1報を準備中である.また,国内外の学会で成果の発表も行った.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,現在用いている熱進化モデルの改良を目指す.従来のモデルは,マントルの1層対流を仮定していた.しかし,近年の研究より,大きな惑星ではマントルの対流における上昇流がマントル上部まで到達せず,その結果,厚い熱伝導層が発達することが指摘されている.このような惑星の熱進化に,従来のモデルが適用できるとは限らない.そこで,本研究では,上記のような特徴を再現したモデルを構築するために,混合長理論とパラメータ化対流モデルを組み合わせたモデルの構築を目指す. また,前年度の研究より,若い惑星系の地球型惑星が,ハビタブルな惑星の候補として重要であることが示唆されている.こうした惑星は厚いCO2大気をまとっていることが期待される.本年度はこうした惑星の観測的な特徴を明らかにすることを目的し,惑星大気の放射モデルを用いた検討を行う.
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Research Products
(5 results)