2015 Fiscal Year Annual Research Report
ソーシャル・パワーが果たす新たな市民統治の形―行政広報が作るメディア統治モデル―
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15J01980
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野口 将輝 北海道大学, 国際広報メディア・観光学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 行政広報 / 広報評価 / 協働 / コミュニティ意識 / 社会関係資本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年はまず、これまでの行政広報の定義の変遷、評価・効果測定の現状について、先行研究サーベイを行った。その結果、これまでの行政広報の定義とその実態には大きな乖離が見られ、また行政広報の効果・評価の動きはほとんど見られないことがわかった。また、その中で行政広報および地方自治において、協働による統治の重要性の高まりを受け、ソーシャル・パワーの構成を、根源的役割を果たすことが予想される、「地域の住民と行政の協働の意識」をもとに再構成を行った。つまり、本研究におけるソーシャル・パワーは、地域の住民の行政に対する協力・協調・監視の意識「自治体協働意識」、地域住民の連帯の強さである「社会関係資本」、地域住民の地域に対する意識「コミュニティ意識」を主眼に、住民意識を測定するものといえる。 本年は、その後そのソーシャル・パワーと行政広報の関連性を実証的に分析するため、2003年に全国に先駆けて自治基本条例を制定し、協働を念頭に置いた統治を行っている北海道ニセコ町を対象に、ニセコ町役場の協力を得て、住民アンケートを実施したこれまでの分析では、ニセコ町においては、ソーシャル・パワーの一構成要素であるコミュニティ意識が先行研究と異なり、4因子構造から3因子構造をとり、住民の連帯・積極性因子と自己決定因子が結合していることが判明しており、コミュニティ意識と社会関係資本のそれぞれの下部尺度を独立変数、従属変数に自治体協働意識とする重回帰分析を行った結果、その結合した「連帯・自己決定因子」が正の影響(β=.58***)を示した。一方、近隣や特定の友人に対する信頼感「特定信頼指数」が負の影響(-.17*)を示す結果を得た
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は、本研究および博士論文の基盤となる、自治体の広報調査を北海道ニセコ町役場を対象に行っている。その調査は既に平成27年夏に実施しており、対象自治体の北海道ニセコ町への変更後も、速やかに地方自治体との折衝を行うことができた。その結果、無事フィールドワークによる情報収集とアンケート調査を実施できた点では、期待通りに研究が進展したといえる。現在は、得られたデータの分析と平行し、先行研究を中心に、行政広報のあるべき姿と現状把握に努めている。 また、この調査結果の一部が、着実にその後の学会発表にまとめられたことも一つの成果として捉えられる。加えて、積極的な姿勢で二度の国際学会での発表を経験しており、そのうちの一つでは学会賞を得られたことは大きな業績である。またニセコ町の調査のもととなった小樽市の広報評価研究での、国内学会で研究奨励賞も得るなど、調査・分析と学会発表・業績という両面での研究活動が光る1年であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、平成27年夏に本研究の基盤となる、自治体の広報調査を北海道ニセコ町役場を対象に行っており、今後はそのデータの分析と先行サーベイが中心となる。本年のデータの分析については、町民全体の広報ツールの活用と市民意識(自治体協働意識、社会関係資本、コミュニティ意識)の関連を中心に行ったが、今後は第一に先行研究を踏まえ、共分散構造分析を用い、全体のモデル化に取り組んでいく。第二に、町民を複数のクラスターに分解し、そのクラスターごとの分析も進めていく予定である。また、理論分野では、行政広報がハーバーマスの公共圏の議論の中でどのようにとらえられるかを中心に議論を深めていく予定である。
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Research Products
(2 results)