2015 Fiscal Year Annual Research Report
沈み込むスラブ物質の高温高圧下における弾性と融解関係の解明;地球内部の水のゆくえ
Project/Area Number |
15J02017
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
増野 いづみ 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 弾性波速度 / 高圧鉱物 / 含水鉱物 / 下部マントル |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの申請者の研究によって、最下部マントルまで安定な含水相であるδ-AlOOH相の弾性波測定を行うことにより、この相がマントル遷移層や最下部マントルで報告されている地震波不連続に寄与している可能性があることが示唆された。この結果は、国際学術誌であるJournal of Geophysical Research: Solid Earthに受理・掲載された。 また今年度は、Brillouin散乱法を用いた超高圧下における鉄を含むブリッジマナイト(Mg-ペロブスカイト)の弾性波速度測定に着手した。この結果、今までに報告されている数倍以上の圧力下(実際の下部マントル最下部圧力)までの鉄を含むブリッジマナイトの弾性波速度の測定に成功した。ブリッジマナイトは地球の下部マントルの大部分を占める鉱物であり、本研究の実験結果であるブリッジマナイトの弾性波速度と実際の地球の地震波観測データとを比較するによって、下部マントルの鉱物学的モデルをより強く制約することができると考えられる。現在、ブリッジマナイトの弾性波速度に対する鉄の効果を決めるため、透過型電子顕微鏡(TEM)-電子エネルギー損失分光法(EELS)装置を用いて、回収試料のブリッジマナイトにおける鉄の量および価数の測定を試み、データを解析中である。今後は回収試料の鉄の価数・濃度測定をまとめることにより、ブリッジマナイトの弾性波速度に対する鉄の効果を決め、下部マントルの鉱物学的モデルを議論し、これらの結果を発表する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東北大学理学研究科設置のBrillouin散乱測定装置とダイヤモンドアンビルセル高圧発生装置を用い、今までに報告されている数倍以上の圧力下での鉄を含むブリッジマナイトの弾性波速度測定に成功した。加えて、透過型電子顕微鏡(TEM)-電子エネルギー損失分光法(EELS)装置を用いた、回収試料のブリッジマナイトにおける鉄の量および価数の測定に着手した。ダイヤモンドアンビルセルから脱圧した試料を回収し、マニピュレータ付き集束イオンビーム(FIB)を用いて試料をTEM-EELS測定が可能な薄さまで薄膜化し、鉄の濃度および価数測定を行った結果、十分な精度のスペクトルデータを得ることができた。以上のFIB装置およびTEM-EELS装置は、ドイツのバイロイト大学バイエルン地球科学研究所に訪問し、宮島延吉博士、Sylvain Petitgirard博士、Dan Frost教授のご協力のもと使用させていただいた。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、ブリッジマナイトの弾性波速度に対する鉄の効果を決めるため、透過型電子顕微鏡(TEM)- 電子エネルギー損失分光法(EELS)装置を用いたダイヤモンドアンビルセルの回収試料の鉄の量および価数の測定を試み、データを解析中である。一つ目の回収試料に関しては議論に耐えうる量のデータが得られたと考えているが、二つ目の試料に関しては弾性波速度測定を行った点を狙っての測定ができていないため、再度鉄の濃度・価数測定を行う必要がある。これらの測定を行うために今年度中に再度バイロイト大学バイエルン地球科学研究所に訪問する予定である。 それらのデータを解析し、回収試料の鉄の価数・濃度測定をまとめることにより、ブリッジマナイトの弾性波速度に対する鉄の効果を決定する。その後、下部マントルの鉱物学的モデルをマントルの対流が一層対流であるか二層対流であるか場合分けをして、どちらの説が妥当であるか議論する。
|