2015 Fiscal Year Annual Research Report
神経細胞のスパイク列から神経回路の構造を推定する統計手法の構築
Project/Area Number |
15J02034
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
翁長 朝功 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 神経ネットワーク / 複雑ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、本研究の目的である、大脳皮質の神経細胞を実験計測したスパイク列から神経細胞の回路構造の推定をするために、まず神経回路網の構造と神経活動の関係について表す確率モデルを構築した。また、この確率モデルを用いて理論的な解析を行った。 神経活動では、過去のスパイクが未来のスパイクの発生を促す。伝達性がepidemic thresholdを超えて、スパイクが連鎖的に発生し急速に拡散する場合については広く研究されてきた。しかしながら、伝達性がepidemic thresholdより小さい場合は完全には理解されていない。本研究で、我々はepidemic thresholdに達する前に、スパイクのカスケードが存在することを明らかにした。神経回路網におけるスパイクのカスケードは、例えば、運動の生成や記憶の保持などに役立つ場合がある。このカスケードは、伝達性がepidemic thresholdより遥かに小さい時でも現れ、カスケードが現れる限界値はネットワーク構造に強く依存する。我々は、ネットワーク構造の情報が与えられると、ネットワークにスパイクのカスケードが現れるかどうかを予測できる。さらに、ネットワーク結合を繋ぎかえることにより、スパイクのカスケードを抑制、または促進させる方法を示した。 現在は、次の段階で神経科学の実験研究者と共同研究を行い、今年度構築した解析手法を実験データに適用するため、実験データの解析手法を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経回路網の構造と神経活動の関係についての確率モデルの構築は順調に進んでおり、国際会議で発表し、現在論文を投稿中である。そのため、概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、神経科学の実験研究者と共同研究を行い、構築した解析手法を実験データに適用する。 複数の神経細胞の信号を同時記録したデータの統計解析を行う研究のメリットは、神経回路網が情報を処理するメカニズムの解明につながること、および社会ネットワークなど他の複雑ネットワークの解析に応用できる統計解析の手法を構築することである。今年度の研究では、これらの応用を見据え研究を発展させていく。
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Research Products
(6 results)