2015 Fiscal Year Annual Research Report
リープ型光格子中での超低温量子気体による遍歴強磁性の実現と解明
Project/Area Number |
15J02035
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小沢 秀樹 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 平坦バンド / Lieb格子 / 平坦バンド強磁性 / 量子シミュレーション / 冷却原子 / ブロッホ振動 / STIRAP |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はリープ型光格子の平坦バンド中のダイナミクスを研究した。 リープ型格子、カゴメ型格子、のこぎり型格子などの特殊な形状の格子では、トンネリングが破壊的に干渉することで平坦バンドが現れる。平坦バンド上でボース・アインシュタイン凝縮(BEC)が安定かどうかということは興味深い疑問である。しかし平坦バンドは基本的に励起バンドであるので、実験的にはアクセスが困難である。そこで今回、平坦バンドへボソンを導入する手法を開発した。以下ではこの手法を位相印加法と呼ぶ。さらに、平坦バンドに特有の現象を観測するために、副格子の分布を直接観測する手法を開発した。この手法を用いて、初期状態としてB+CとB-Cという位相の異なる状態の、Aサイトへのトンネリングの違いを観測することに成功した。また、B+Cという状態は第1バンドと第3バンドの重ね合わせ状態になっている。この重ね合わせ状態を用意する手法とブロッホ振動を組み合わせることで、各準運動量でのバンドエネルギーを測定することが可能である。結果として、オンサイト相互作用によって平坦バンドが分散をもつことがわかった。 位相印加法とは別に、原子を平坦バンドへ導入する手法も開発した。リープ格子の固有状態は3サイトに局在した状態の重ね合わせになっているので、Λ型遷移で結ばれた3準位系と類似性がある。この意味では、平坦バンドの固有状態は3準位系のDark stateに対応している。中間状態に原子を分布させることなく2状態間をつなぐSTIRAPに対応して、空間的断熱移送(SAP)が可能になる。リープ型光格子中のフェルミ縮退において副格子間のSAP現象を観測した。物質波でのSAP現象の観測は世界初の例である。また、SAPの中間点ではリープ格子の平坦バンドに対応する状態が実現しており、これを利用してフェルミオンを平坦バンドのみに導入することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、初年度ではブラッグ分光によりリープ型光格子のバンド構造を観測することを計画していた。これは、2本の近共鳴のレーザー光をリープ型光格子中のボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)に照射することにより、2光子遷移を起こす方法である。しかし、実際には2本のレーザー光の角度を変化させることが実験的に困難であることが判明した。そこで、ブロッホ振動と重ね合わせ状態を使ったバンドギャップ測定を組み合わせた手法を考案した。この手法により、リープ型光格子のバンド構造を測定することに成功した。また、相互作用がバンド構造に与える影響も系統的に調べることができたので、当初の目的を果たしたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平坦バンド強磁性の発現に向けて問題になることは、転移温度領域への十分な冷却である。転移温度領域へ到達するための新たな冷却手法として、光格子中での蒸発冷却を行うことを予定している。これは、光格子とは別のレーザー光を入射し、調和トラップを補正することで、トラップ中心付近のエントロピーを外に運び出すというものである。この補正レーザーの光源開発から取り組みはじめる。レーザー強度やビーム径、照射時間などのパラメータの最適化によって転移温度領域への冷却を目指す。
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Research Products
(6 results)