2015 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティック制御におけるヒストンバリアントH2A.Zアセチル化の機能解析
Project/Area Number |
15J02041
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
日下部 将之 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | エピジェネティクス / ヒストンバリアント / H2A.Z / 転写制御 / 染色体分配 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物のゲノムDNAは核内タンパク質ヒストンと結合してクロマチン構造を形成し、クロマチン構造の動的変換によって多様なゲノム機能が制御されている。このようなクロマチン構造の変換には、通常のヒストンに代わってクロマチンに導入されるヒストンバリアントが重要な役割を担っている。特にヒストンバリアントH2A.Zは酵母からヒトにまで進化的に高度に保存されており、生物学的に重要な機能を持つと考えられているが、その機能は多くの点が不明である。本研究は、遺伝子破壊細胞の樹立が容易なニワトリDT40細胞により樹立されたH2A.Z遺伝子破壊(H2A.Z KO)細胞を用いて、ゲノム機能制御におけるH2A.Zの機能解明を目指した。まず、H2A.Zのゲノム機能制御への寄与を検証するため、H2A.Z KO細胞に対してマイクロアレイ転写解析・顕微鏡観察を行い、H2A.Z KO細胞の表現型を解析した。この結果、H2A.Zは染色体分配と転写制御の両面において重要な機能を持つことが示された。次に、H2A.Zの機能ドメインとして、アセチル化修飾を受けるN末端テール領域に着目した解析を行った。具体的には、野生型H2A.Z(wtH2A.Z)、アセチル化修飾の起らない変異型H2A.Z(5KR-H2A.Z)、テールをH2A型に置換したキメラ型H2A.Z (H2A-H2A.Z)をH2A.Z KO細胞に安定発現させ機能相補性を検証した。樹立した安定発現株の表現型を比較した結果、いずれの細胞株でも染色体分配異常を相補可能であった。しかし一方、変異型H2A.Zを発現する細胞株では、wtH2A.Z発現細胞と比べて遺伝子発現に異常が生じていた。これらの結果は、H2A.Z N末端テールが転写制御に特異的に寄与することを示しており、H2A.Z N末端テールのゲノム機能制御における機能を明らかにすることが出来た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ゲノム機能制御におけるH2A.Zの機能を解析するため、(1)H2A.Z KO細胞を用いた表現型解析、(2)H2A.Z KO細胞に対して外来性H2A.Zを安定発現する機能相補実験系、二つの実験系を組み合わせることで、H2A.Z N末端テールの機能性について解析することが出来た。H2A.Z N末端テールはアセチル化修飾が重要な機能を持つことが知られていたが、配列特異性が転写制御において機能を持つことを示したのは、本研究が初の報告である。さらに、H2A.Z KO細胞を用いた機能相補実験系は、H2A.Z N末端テールのみでなく、H2A.Zのその他の機能ドメインの解析に対しても応用可能なものである。このような新規の知見、新しい実験系の樹立は当初の計画を上回っており、本年度は計画以上に研究が進展したと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究によって樹立された変異型H2A.Z発現細胞を用いて、H2A.Zアセチル化による転写制御機構の解析を行う。これまでの研究によって、H2A.Zアセチル化ががん原遺伝子JUN, FOSの転写誘導に寄与することを示唆する結果が得られているので、この2遺伝子をモデル遺伝子としてクロマチン免疫沈降法、ヌクレアーゼ処理を用いたクロマチン構造解析を行う。また、H2A.Zアセチル化修飾はDNA損傷修復に寄与することも示唆されている。そこで並行して、N末端テール変異型H2A.Z発現細胞を用いて、DNA損傷修復におけるH2A.Zアセチル化修飾の機能についても検証を行う。
|
Research Products
(6 results)
-
[Journal Article] enetic complementation analysis showed distinct contributions of the N-terminal tail of H2A.Z to epigenetic regulations.2016
Author(s)
Kusakabe, M., Oku, H., Matsuda, R., Hori, T., Igarashi, K., Fukagawa, T. and Harata, M.
-
Journal Title
Genes to Cellls
Volume: 21
Pages: 122-135
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
-