2016 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性トンネル接合を用いた室温動作生体磁場センサの開発
Project/Area Number |
15J02067
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
加藤 大樹 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 強磁性トンネル接合 / 磁場センサ / 生体磁場 |
Outline of Annual Research Achievements |
強磁性トンネル接合(MTJ)による室温での生体磁場は、医療研究や医学研究に大きく貢献できると考えられるが、検出可能磁場の向上が必要である。昨年度作製条件を最適化した低ノイズと高磁場感度が期待されるNiFeSiBを用いたMTJを作製した。また、セカンドアニール条件最適化に向け、反強磁性IrMn層を薄膜化したMTJを作製した。 先行研究においてCoFeSiB/Ru/CoFeB構造をフリー層とするMTJは、Ru膜厚により磁気抵抗特性が変化したため、NiFeSiB/Ru/CoFeBフリー層のMTJにおいてもRu膜厚依存性を調べた。Ru膜厚を0.4 nmから1.1 nmとしたMTJを作製し、TMR比の測定を行い、すべてのRu膜厚において200%を超える高いTMR比が得られた。しかしながら、Ru膜厚を0.8 nm以上のMTJにおいてNiFeSiBとCoFeBの磁気的結合が弱まった。また、セカンドアニールを施し、250℃した際センサ応用に必要である線形的な磁気抵抗曲線が得られたが、膜面内で磁気特性が分布をもった。これはNiFeSiBの磁気異方性がセカンドアニールにより分散したと考えられる。 以上を踏まえ、セカンドアニール温度(Ta-2nd)を低減する必要があると考えた。Ta-2ndはピン層の磁気異方性が変化する温度で決まるため、IrMn膜厚に注目した。フリー層にはNiFeを用い、IrMn膜厚を6 nmと10 nmとしたMTJを作製し、Ta-2nd依存性を調べた。IrMnを10 nmとしたMTJは260℃以上でピン層の磁気異方性の方向が変化した、一方IrMnを6 nmとしたMTJは220℃でピン層の方向が変化した。また、IrMnを6 nmとしたMTJにおいてシグナルノイズ比を測定した結果、Ta-2nd依存性は見られず、Ta-2ndを低減できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
NiFeSiBを用いセンサとして必要な線形的な磁気抵抗曲線を有する強磁性トンネル接合(MTJ)が得られた一方、熱処理による磁気異方性分散の影響でシグナルノイズ比の評価を行うことができず、実験の方針を一部見直し、予定を達成できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
アモルファス系の軟磁性体を用いたMTJにおいて強いセカンドアニール(Ta-2nd)温度依存性を示すことが分かっており、今回得られた結果と合わせてTa-2nd温度依存性の評価を行う。またノイズの起源と考えられる磁区構造の観察を行い、物理的な起源を実験的に探る。得られた最適な構造を有するMTJにおいて検出可能磁場を測定し、生体磁場センサ応用に向けた知見を得る。
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Research Products
(6 results)