2016 Fiscal Year Annual Research Report
回転拡散を利用したタンパク質反応ダイナミクス測定法の開発とその応用
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15J02073
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉武 智之 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 蛍光異方性解消法 / タンパク質構造 / タンパク質変性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度はタンパク質の回転拡散係数と二次構造との関係を蛍光異方性解消法を用いて詳細に調べた。具体的には(1)ヒト由来のアルブミン(HSA)、Conalbumin、Ovalbuminなど複数のタンパク質について表面のリジン残基に位置非特異的にラベリングしたサンプルを作成し、変性曲線に沿った回転拡散係数の測定を行った。また、(2)タンパク質Lysozymeについて遺伝子操作により導入したシステイン残基に対して位置選択的にラベリングを行い、変性曲線に沿った回転拡散係数測定を行った。 HSA等の測定からタンパク質の回転拡散係数は変性することにより増加し、変性曲線に沿った異方性曲線の挙動はタンパク質の天然状態と変性状態の2状態モデルで解釈可能であることがわかった。タンパク質変性時の回転拡散係数の増加は変性することでタンパク質の局所構造のゆらぎが増加するためであると考えられる。回転拡散係数がタンパク質変性時に増加する挙動は、変性時に大きく減少する並進拡散係数と真逆であり今回得られた結果は、タンパク質構造を調べるために並進・回転拡散係数を使い分ける際に有用な知見になると考えている。また、位置特異的にラベリングしたLysozymeの測定では、HSA等と同様に変性により回転緩和速度が増加する挙動が見られた。一方、蛍光色素によるラベリングの位置を変えると変性曲線に対する回転拡散係数変化の挙動に若干の違いが見られ、ラベリング位置を変えることで局所的な構造変化の情報が得られることが示唆された。今後、Lysozymeを対象に変性過程における回転拡散係数変化の挙動をラベリング位置を替えて詳細に調べ、最終的には反応ダイナミクス測定に適用したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
蛍光異方性解消法を用いてタンパク質変性時の回転拡散係数の挙動を調べた結果、変性したタンパク質は構造の局所的な動きが増加するためタンパク質全体の回転を捉えることができないことがわかった。その為、当初の方針(蛍光異方性解消法を用いてタンパク質全体の回転を捉える)を変更し、蛍光異方性解消法を用いて局所的な動きを捉え、反応ダイナミクス観測に適用することを目標とした。平成28年度は方針変更に伴う対象タンパク質の選定・作製、蛍光色素の選択等を行い、着実に前進しているが予定していた反応ダイナミクス測定を行うことができていないため、上記のように評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 遺伝子操作を用いてLysozymeの構造上の様々な位置に位置特異的に蛍光色素でラベリングしたサンプルを作成する。 2. 作成したサンプルに対して蛍光異方性解消法により回転拡散係数測定を行い、変性曲線に沿った回転拡散係数変化のラベリング位置依存性を詳細に調べる。 3. 2の結果を踏まえて、Lysozymeのアンフォールディング反応(あるいはリフォールディング反応)と反応における構造変化の位置依存性を蛍光異方性解消法を用いて検出することを目指す。
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Research Products
(2 results)