2015 Fiscal Year Annual Research Report
三次元多様型シクロプロパンライブラリーに基づくペプチド低分子化方法論の確立
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15J02083
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
一ノ瀬 亘 北海道大学, 薬学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | フォーカスライブラリー / シクロプロパン誘導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究の重要な点である計算化学手法によるバーチャルライブラリー構築とこれを利用したフォーカスライブラリーの選定を行った。また効率的合成ルート構築の検討を行った。 標的タンパク質(JMJD2a)のX線結晶構造解析のデータを元にリガンドである環状ペプチド中の4残基をファーマコフォアとした。計算化学ソフトを用いて、設計したシクロプロパン型ペプチドミメティックのバーチャルライブラリーとして化合物11,664個を作成した。それぞれの化合物において側鎖の回転などの配座発生を行い、配座情報を含むライブラリーデータ(2,870,815配座)を作成した。 バーチャルスクリーニングを次のようにして行った。まずファーマコフォアに対してフィットする配座データを選出した。さらに標的タンパク質とのドッキング計算を行い、安定化エネルギー(スコア)を算出し、これに基づいて配座データを順位づけした。ここまでにヒット配座が12,052配座、化合物は1,781個に選別した。ここで実際の合成面での容易さを考慮しつつ、さらにスコア上位に当てはまる化合物に構造的特徴がないかを解析した。スコア上位1%における各シクロプロパン骨格の分布を調べると特定の骨格が集中しており、この骨格を合成することを第一選択にした。また側鎖リンカー長に着目すると4つの側鎖の内、2カ所でn-プロピル鎖を持つ化合物が多数であった。そこでこの側鎖長は固定し、残りの2つのリンカー長を3種類組み合わせた計9種の化合物を今回のフォーカスライブラリーに決定した。 フォーカスライブラリーの合成を行うことにした。本研究以前に検討していた合成ルートにおいて課題であったシクロプロパンβ位におけるアルキルエーテル化の工程を再検討した。立体的に混み合っているエステル部位を先にアルデヒドへ還元後、エーテル結合形成反応を行う経路を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではフォーカスライブラリー選定をスコア上位から30化合物程度と考えていたが、バーチャルスクリーニングを行うとスコア上位の化合物には構造的特徴があることが分かった。合成の観点も踏まえて解析することで特徴的な骨格とライブラリーをより詳細に抽出することができた。 また本研究以前に検討していた合成ルートでは、結果的にスコア下位に存在するライブラリーの合成を行うことになった。今回選定したライブラリー化合物を合成する上で、非対称エーテル合成の工程を収率よく達成できれば全体工程数の短縮とその後の中間体をスケールアップして用意することができ、目的のひとつである迅速的ライブラリー合成により近づけると考えた。現在検討中ではあるが、一般的に高収率の反応例が少ない非対称アルキルエーテル合成において、本化合物の立体構造に着目し、官能基変換の後にエーテル化を行うことにした。 上記の合成ルートが確立出来れば、今後多数のリガンド候補を用意することが可能となる。これらスコア上位と下位の両化合物群を実際にアッセイを行うことによって、計算化学的な解析と実際のリガンド活性の相関を得ることが出来、本方法論の有効性をより強固に主張できると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
エーテル合成の検討から効率的な合成法の確立を行う。一連のフォーカスライブラリーの合成を完了し、標的タンパク質とのin vitroアッセイを行う。現在のモデルタンパク質は東京大学菅教授の提供のものであり、アッセイはその共同研究の一環として実施する予定である。 アッセイ結果に応じて、リガンド-タンパク質間の活性配座を修正、精密化し、再びバーチャルスクリーニングを行う。このとき活性等価体となる置換基、非アミノ酸側鎖を検討する。 得られた二次ライブラリーを合成し、再び薬理活性評価を行う。目標として会合定数 nM を持つリード化合物を創出する。 リード化合物のin vivo 評価を行う。
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