2016 Fiscal Year Annual Research Report
三次元多様型シクロプロパンライブラリーに基づくペプチド低分子化方法論の確立
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15J02083
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
一ノ瀬 亘 北海道大学, 薬学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ペプチドミメティック / シクロプロパン / 計算化学 / ライブラリー合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的化合物ライブラリーの合成検討と、ペプチドミメティックにおける比較研究を行った。 前年度、選定したフォーカスライブラリーは特定のシクロプロパン骨格および側鎖官能基の配列において側鎖リンカー長の異なる9種類の化合物であった。以前検討していた合成ルートにおいて、課題であったシクロプロパンβ位酸素のアルキルエーテル化は、大過剰の試薬を作用させることで良好な収率で進行することがわかった。また不斉炭素側鎖の構築には、Ellmanイミンに対する立体選択的付加反応を行い、高選択的に目的物を得ることが出来た。二つの側鎖官能基の導入後、シクロプロパンα位炭素の酸化によってカルボン酸へと変換し、共通中間体に到達した。今後、リンカー長の異なる残りの側鎖官能基部分をそれぞれ段階的にアミド縮合で導入することで、目的のフォーカスライブラリー9種の合成を達成する。 本研究課題はペプチドミメティック研究の一つであるが、よりペプチド構造に即したミメティック研究であるペプトイドに注目した。ペプトイドにおいて計算化学上の情報を利用した分子デザインと実際の構造活性相関を調べることで、当課題の有用性と注意点をより明確にできると考えた。イギリス、ダラム大学化学科のSteven L. Cobb講師の元でペプトイドライブラリーを設計、合成し、その生理活性試験を行った。 天然の抗菌ペプチドを模倣したらせんペプトイドにおいて、側鎖配列のみを変えた場合の系統的な構造活性相関はこれまで報告がなかった。ペプチドの簡易計算モデルソフトを利用し、らせんペプチドライブラリー(81種類)の疎水性モーメントを算出した。その中からモーメントの大きな配列と小さな配列を選定、ペプトイドとして合成した。微生物に対する抗菌活性を調べたところ、モーメントが大きい程、活性も向上するというおおよその相関を示すことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、合成経路の確立は当該年度において達成し、選定したライブラリー化合物の初期生理活性試験を実施することを計画していたが、合成検討に予想以上に時間を必要とし、共通中間体の合成までに留まってしまった。 シクロプロパンα位炭素からのアルキルエーテル構築は、当研究室の中でも新しい骨格への取り組みであった。これは将来的にすべての側鎖官能基の改変が容易になることを見据えて合成スキームを設計したためである。その他の官能基変換および炭素鎖伸長は汎用性の高い反応を採用していた。しかし、件のアルキルエーテル構築には一般性のある反応手法がまだ開発されておらず、さらに目的部位はシクロプロパン骨格の立体障害によって反応性の低下があったと見られる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず共通中間体から目的ライブラリー化合物を早急に用意し、標的タンパク質に対する活性試験を行う。並行して、バーチャルスクリーニングにおいて下位スコアになった化合物を一部選定し、確立した合成経路を元に比較用ライブラリーを検討する。これらスコア上位と下位の比較によって、計算モデルと実際の活性との相関を確認し、本研究の有用性をより支持することを狙う。 活性試験の報告に合わせて、リガンド-タンパク質間の活性配座を精密化した上で、再度バーチャルスクリーニングを行い、より高活性なリガンド候補が得られるか調べる。また側鎖官能基の生物学的等価構造への変換やリンカー長の決定など、精密モデルの情報に基づいた最終的なリガンドを開発する。 また英国での研究結果をまとめ、国際論文に発表するほか、当課題における計算化学によるライブラリー合成の効率化の妥当性について議論する。
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Research Products
(1 results)