2015 Fiscal Year Annual Research Report
惑星が持つ衛星-リング系の多様性:その起源と進化の理論的研究
Project/Area Number |
15J02110
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
兵頭 龍樹 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 土星 / 惑星リング / Fリング / 衛星 / 巨大惑星のリング-衛星系 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽系には多様な衛星系が存在する。例えば、地球と月のような唯一つの巨大衛星を持つ系や、土星や天王星のように数十個の非常に小さい衛星を持つ系などが存在する。また、月は地球の自転軸の傾きを一定に保ち、地球の気候を安定に保つ役割を果たしている。一方、土星などの複数個の衛星の一部は内部に水を保有している可能性が高い。このように衛星は生命起源・進化においても非常に重要である。本研究は数値シミュレーションを用いて衛星系が持ちうる多様性に理論的制約を与えることを目的とする。特に近年の研究において、土星のメインリングはより外側に拡散することで、観測される複数の衛星を生み出してきた可能性が明らかになった。平成27年度において、申請者は交付申請書に記載したように、上述の拡散によって形成された衛星同士の衝突破壊過程をN体シミュレーションを用いて詳細に調べた。本研究によって、土星のメインリング外側でコアを持つ衛星同士が衝突をした場合、衛星は完全に破壊されることなく、表面付近のみが破壊され、破片は衝突を生き延びた残りの衛星間に細く挟まれるように分布されることが分かった。さらに、このようにして形成された衛星-リング系は、探査機カッシーニによって土星周りに観測される細いFリングとその両側にFリングを挟み込むようなかたちで存在する二つの羊飼い衛星の系に類似していることが分かった。本研究の結果は、世界で初めてFリングと羊飼い衛星の起源を説明するものとなった。以上の研究結果は、査読あり国際学術誌Nature Geoscienceに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述の「研究実績の概要」で説明したFリングと羊飼い衛星起源解明の結果は、査読ありの国際学術誌Nature Geoscienceに掲載され、神戸新聞や産経新聞を含む国内外のメディアで掲載された。さらに本研究の結果は、土星のみならず、他の巨大惑星周りでも適応できる結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は冥王星の小衛星の形成起源解明のみを目標としていたが、「研究目的」で述べたように本研究の最大の目的は、惑星がもつ衛星系の多様性の解明である。それゆに、冥王星だけでなく、未解決である火星の衛星系の形成起源も視野に入れたより包括的な研究を行う。研究手法は、引き続き世界最高規模の大規模な数値計算を行う。
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Research Products
(5 results)