2016 Fiscal Year Annual Research Report
Exploration of Reionization and Supermassive Black Hole Formation through Low-Luminosity Quasar Searches at High-redshift
Project/Area Number |
15J02115
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
尾上 匡房 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 初期宇宙 / クェーサー / 超巨大ブラックホール / 宇宙再電離 / すばる望遠鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
(i)すばる望遠鏡による高赤方偏移低光度クェーサー探査: クェーサーは銀河中心の超巨大ブラックホール(SMBH)が質量降着活動により明るく輝く天体で、初期宇宙観測の有用な観測対象として知られている。赤方偏移6以上(z>6, ビッグバン後10億年未満)の時代にこれまで見つかってきたクェーサーは約100個であるが大半は非常に明るく、典型的なSMBH成長を遠方で探るには低光度クェーサーを大量発見する必要がある。我々は、すばる望遠鏡のSuprime-Camを用いてz=6クェーサー探査を行った。本プロジェクトの観測自体は2009年に行われ初期成果として2個を発見していた。しかし17個の候補天体の追観測が完全に終わっていなかったため今回新たに4つの分光観測を行い、さらに後述するHSC-SSPサーベイの撮像データを用いて候補天体の検証を行った結果、z=6クェーサーの数密度を低光度側で初めて有効な制限をつけることに成功し、この時代にクェーサーが出す電離光子量は宇宙空間を完全電離するのに必要な量の10%程度しかなく、クェーサーが宇宙再電離の主な担い手でないという強い証拠を得た。 さらに、現在進行中の超広視野サーベイ(HSC-SSP)においても昨年度と同様z>6クェーサーを行った。現在観測済の約400平方度の領域の中から30個の新たなクェーサーを発見した。これは既存のサンプルの約20%にあたる量であり、これを約1年半で達成したことは特筆に値する。 (ii)クェーサーペア周囲の銀河密度測定: HSC-SSPデータを用いてz=4で明るいが二つ近接している「クェーサーペア」周囲の銀河密度を測定したところ、2個のペア周囲に共に原始銀河団を発見した。この結果はクェーサー発現と密度環境について新たな示唆を与えるものであり、HSC-SSPの広視野と深撮像を生かした独創的な研究と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず自身の入学前から追観測が止まっていたSuprime-Camを用いたクェーサー探査を完了させ、不定性の大きなz=6クェーサー数密度の低光度側に初めて有効な制限を与えられたこと(Onoue et al. 2017b)は大きな成果と言える。 HSC-SSPでのクェーサー探査は既に30個という大サンプルの構築に成功しており(Matsuoka, Onoue, Kashikawa et al. 2016, 2017)、新たに発見されたクェーサーの明るさは既存のサーベイが届かなかった領域まで達している。本プロジェクトは30人以上の研究者が関わる大プロジェクトであるが、自身は本探査で候補天体選択に関わる中心メンバーとして貢献しており、これまでの成果から遠方での低光度クェーサー探査においては我々の研究グループが世界をリードしている状況になった。また発見されたクェーサーの近赤外追観測を自身が担当しており、これまで競争率の高い海外の望遠鏡時間を計60時間獲得している。サーベイの観測は概ね順調に進んでおり、今後も引き続き大量発見が期待される。 クェーサーペア研究についてはHSC-SSPの長所を生かして自身がプロジェクト提案をし、上に示したように原始銀河団とクェーサー発現について新たな知見を与える成果を出すことに成功した。本成果はHSC-SSPサーベイの初期成果をまとめた論文誌特集号への掲載が予定されており(Onoue et al. 2017a)、クェーサー探査と合わせてHSC-SSPサーベイから数多くの初期成果を残せたことは大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
(i)HSC-SSP探査についてはサーベイの進展に応じて新たな候補天体の選択、追観測を行う。これまではクェーサー発見を論文で報告してきたが、今後は初年度の観測領域内で全ての候補天体の追観測を完了させSuprime-Camでの探査同様に数密度への制限をつけることも目指す。明るさごとのクェーサー選択の不完全性や領域ごとの観測の深さの違いを考慮する必要があり簡単では無いが、サーベイのデータソフトウェアグループ等と協力して達成したい。サーベイ領域の広さにより、これまでになく正確なz=6低光度クェーサーの数密度(光度関数)の制限が得られ、宇宙再電離、SMBH成長等について重要な制限が得られると期待する。 (ii)また発見されたクェーサーのBH質量測定について、現在実行中の近赤外分光観測データを基に行う。7個のz=6, 7クェーサーについて光度よりも直接的な物理量であるBH質量、質量成長率が得られるため0.1-10億太陽質量で成長中、またはすでに成長を終えたSMBH種族をz>6で初めて発見することが期待される。特に既存のサンプル(>10億太陽質量)よりも低質量のSMBH数密度を調べることにより、初期宇宙でSMBHが誕生した時の質量について重要な制限が与えられる予定である。さらに、現在ALMA望遠鏡で進んでいる低光度クェーサーの母銀河観測の結果と合わせることで、近傍宇宙で知られた母銀河ーSMBHの質量関係についてz=6で比較を行う。これまでの同様の研究は最も明るいクェーサーにサンプルがバイアスされていたので、本研究により遠方宇宙での一般的な共進化の描像が得られるはずである。 (iii)クェーサーペア環境については、初年度データではz=4で二個の領域でしか調べられなかった。そこで今後はサーベイ領域の拡大に従って、より大きなサンプルでクェーサーの密集度と銀河の密集度の関係を調べたい。
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Research Products
(10 results)