2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞外マトリックスの硬さ依存的な脂肪細胞分化機構の解明
Project/Area Number |
15J02241
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
黒田 美都 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 細胞外マトリックス / メカノトランスダクション / 間葉系幹細胞 / 脂肪細胞分化 / ビンキュリン |
Outline of Annual Research Achievements |
動物の細胞は、組織においてコラーゲンなどの細胞外マトリックスに囲まれて存在している。この細胞外マトリックスの硬さという物理的な要因が組織幹細胞の分化方向性を調節している。特に、細胞外マトリックスが軟らかいほど脂肪細胞へと分化しやすくなることが知られている。これまでの研究によって、細胞と細胞外マトリックスの接着面に存在するタンパク質ビンキュリンが、組織幹細胞の一つである間葉系幹細胞の硬い細胞外マトリックス上での脂肪細胞への分化を抑制していることが明らかにした。しかし、ビンキュリンの下流で、硬さに依存した脂肪細胞への分化を調節するメカニズムは不明である。そこで本研究では、「細胞外マトリックスの硬さをビンキュリンが感知し、細胞外の硬さという情報を転写因子の細胞内局在と活性の変化を介して核内に伝えることによって間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化を制御している」という仮説を検証することにした。 骨髄由来間葉系幹細胞株であるST2細胞を用いて、硬さの異なる培養基板上である転写因子の挙動の解析および細胞分化の評価を行っている。硬い基板であるガラス上、および硬さの異なるポリアクリルアミドゲル上で、ビンキュリンが転写因子の核局在に与える影響を調べた。その結果、ビンキュリンは硬い基板上で転写因子の核局在を促進し、硬さ依存性を調節していることがわかった。さらに、転写因子の転写活性もビンキュリンによって制御されていることが示唆された。本研究により細胞外マトリックスの硬さを感知したセンサー分子ビンキュリンがどのようにその情報を伝えるかが明らかになり、今後幹細胞の分化方向性を調節する新しい技術の発展に貢献することができると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画の一つであった、転写因子の挙動を評価する実験系の構築に成功した。さらにこの評価系を用いて、ビンキュリンが転写因子の挙動変化に与える影響を解析した。この実験は当初、平成28年度に実施する予定であり、期待以上に研究の進展があった。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、ビンキュリンが転写因子を介して硬さに依存した脂肪細胞への分化を制御するメカニズムについて検討する。具体的には、ビンキュリンを含む接着斑を起点とするシグナル伝達経路に着目し、阻害剤やシグナル分子のドミナントネガティブ変異体または恒常活性化変異体を用いた実験により、ビンキュリンと脂肪細胞分化の関係を明らかにしていく。
|
Research Products
(3 results)