2016 Fiscal Year Annual Research Report
ベンザインの反応を基軸とする多置換イミノキノン合成法の開発と天然物合成への応用
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15J02255
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野呂 尭広 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ディスコルハブジン類 / アルカロイド / 全合成 / ピロロイミノキノリン / 抗腫瘍活性 / 含窒素へテロ環 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、海洋アルカロイドDiscorhabdin Vの合成研究に取り組んだ。Discorhabdin Vはヒト結腸がん細胞に対する細胞毒性を有しており、創薬シード化合物となり得る。また、ピロロイミノキノン構造、アザビシクロ[3.3.1]構造、並びにスピロ環構造を含む、高度に縮環した構造を有しているため、合成化学的にも興味深い天然物である。しかし、C2, C3, C6位の絶対立体配置は明らかになっておらず、未だ全合成も達成されていない。申請者は、Discorhabdin Vの全合成と構造決定を達成するべく研究を開始し、本天然物に特徴的なアザビシクロ[3.3.1]骨格構築に際し、分子内Heck反応の応用を計画した。モデル検討の結果、望みのアザビシクロ化合物を得ることに成功し、同骨格の新規構築法の開発に成功した。また、実際に全合成に向けた合成経路において、安価なバニリンより14工程で合成したトリプタミン誘導体からピロロイミノキノン骨格への変換を検討した。詳細な条件検討の結果、2つヒドロキシル基の保護基を除去して生じたカテコール中間体が、空気雰囲気下において酸化と環化を連続的に起こし、ピロロイミノキノンが一挙に得られることを見出した。さらに、数工程の変換で導いたHeck反応前駆体に対して、モデル検討で確立した条件を適用し、アザビシクロ[3.3.1]骨格構築に成功した。その後、窒素原子の導入を含む数工程の変換により、Discorhabdin Vの基本骨格の合成を達成した。残された課題は酸素原子と臭素原子の導入のみであり、全合成に迫っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、アザビシクロ[3.3.1]骨格の構築について、モデル検討を行った結果、ブロモアニソールから7工程で調製した環化前駆体をHeck反応の条件に付すことで、アザビシクロ体を得ることに成功した。 続いて、Discorhabdin Vの全合成に向け、市販の安価なバニリンから14工程でトリプタミン誘導体を合成した。条件検討の結果、トリプタミン誘導体をBirch還元条件に伏すと、2つのベンジル基をオレフィンを損なうことなく選択的に除去可能であることを見出し、生じたカテコール中間体を空気雰囲気下撹拌することで、酸化と環化が連続的に進行した三環性化合物が高収率で得られた。得られた三環性化合物を2工程でHeck反応前駆体へ導いた後、モデル検討で確立した条件に伏したところ、アザビシクロ[3.3.1]体を得ることに成功した。最後に、側鎖に窒素原子の導入した後、第1級アミンへ導くことで分子内環化を進行させ、Discorhabdin Vの基本骨格の構築に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
Discorhabdin Vの基本骨格構築に成功したため、残る課題である官能基の導入について検討する。すなわち、Discorhabdin VのC3位の酸素原子をアリル位酸化により導入した後、C4位をブロモ化し、ラセミ全合成の達成と相対立体化学の決定を完了する予定である。また、合成中間体であるシクロへキセノンの不斉還元を達成することで光学活性体を合成し、Discorhabdin Vの不斉全合成の達成と絶対立体化学の決定を完了する予定である。
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Research Products
(4 results)