2015 Fiscal Year Annual Research Report
環境情報および他者理解を踏まえた教示行動の初期発達:乳幼児期からの実証的検討
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15J02341
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
孟 憲巍 九州大学, 人間環境学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 早期コミュニケーション / 情報伝達 / 乳児期 / 協力行動 / 共感 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、研究課題「環境情報および他者理解を踏まえた教示行動の初期発達:乳幼児期からの実証的検討」の実施は、乳児の指差し行動を指標に行われてきた(Meng & Hashiya, 2014)。これまでの結果をNEEPS2015(Boston、アメリカ)にて英語発表した。一般向け研究結果報告として、九州大学が出版するKyudaiNewsに寄稿し、紹介した。また、本課題の下位テーマに位置づけられる「意図推論の発達」に関する研究も行い、日本心理学会79回大会(名古屋)にて発表した。現在進行中の研究結果については、報告者は本課題の不可欠な一部として、「他者間のインタラクションに対する乳児の理解およびその発達」といった研究を実施した。具体的には、本研究は次の2点に注目した。行動指標として乳児の注視行動を用いたことと、直接にインタラクションに関与しない第三者として乳児に参加してもらうことである。本研究の仮説は、自分との直接に関係しない他者同士のインタラクションに関しても、乳児が他者らの認知状態を考慮し、他者らに対する自動的な情報伝達行動を見せることである。報告者は、データ収集を中心に本研究を実施してきた。その結果、85件の調査が行われ、その中の72件が最終サンプルとして使用されることになった。そのサンプル数は、発達心理学の分野では妥当な議論ができるものであると考えられる。本研究の結果は、新学術領域研究「共感生の進化・神経基盤」第3回領域会議(東京)で経過報告をおこなっている。また、日本発達心理学会第27回大会(北海道)、日本赤ちゃん学会第16回学術集会(京都)、ICP2016(横浜)、LCICD2016(Lancaster、イギリス)で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、研究課題の実施は、乳児の指差し行動を指標に行われてきた。その成果の一部によれば、ある特定のモノを知っているかどうかといった他者の知識状態を他者との共有経験に基づいて推測したうえ、その他者にとっての「新しいモノ」(知らないモノ)を自発的に指差して教えることは、1歳半児に見られる(Meng & Hashiya, 2014)。その結果は、早期指差しの機能に関する議論に重要な視点を与える同時に、ヒト社会における協力行動の発達的起源の解明に新たな知見を加えたと考えられる。教示行為の早期発達のメカニズム(どのような認知能力および身体能力と関連しているか)をさらに明らかにするため、これまで行ってきた児と他者との二者間におけるやりとりを調べることだけには限界があると考えられる。それは例えば、乳児の指差しは12ヶ月頃から出現することや、二者間やりとりにおける乳児の行動の動機を調べることに限界があること(二者間におけるやりとりに対する乳児の認知がメタ的なものであるかどうかは分からない)などが挙げられる。そこで、「他者間のインタラクションに対する乳児の理解およびその発達」といった研究を実施した。具体的に、次の2点に注目した。行動指標として乳児の注視行動を用いたことと、直接にインタラクションに関与しない第三者として乳児に参加してもらうことである。本研究は本課題の一環として、教示行為を含む情報伝達の早期発達の解明に貢献することが期待される。 今年度では報告者は、データ収集を中心に本研究を実施してきた。その結果、85件の調査が行われ、その中の72件が最終サンプルとして使用されることになった。そのサンプル数は、発達心理学の分野では妥当な議論ができるものであると考えられる。現在は、データの解析方法について検討を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
課題実施にあたって、これまでの研究結果を決定する要因をさらに検証する必要があると考えられる。1歳半児に見られる「他者にとっての新しいものを、自発的にその他者に教える」行動傾向は、どのような発達経路を持つだろうか。また、乳児はどのような心理的動機を用いてそのような行動を行っているだろうか。前者に関しては、これまでの研究は指差しを手がかりに行われてきたが、発達経路の解明においては方法論的限界があると考えられる。「教える」指差しは 1 歳頃から見られることである(Tomasello et al., 2007)。後者に関しては、これまでの研究では、他者に情報を教えるといった示唆は行動結果から得られるが、その行動の背後にあるモチベーションをより確実に確認するには、新たな実験パラダイムが必要となるだろう。なぜなら、乳児は二者間インタラクションに関与している以上、インタラクションそのものから何らかの影響を受けることは否定できないからである(乳児がメタ的にインタラクションを認知することは難しい)。以上のことを踏まえて報告者は、「他者間のインタラクションに対する乳児の理解およびその発達」といった研究を実施した。具体的には、次の2点に注目した。行動指標として乳児の注視行動を用いたことと、直接にインタラクションに関与しない第三者として乳児に参加してもらうことである。仮説は、他者同士のインタラクションに関しても、乳児が他者らの認知状態を考慮し、他者らに対する自動的な情報伝達行動を見せることである。それらの仮説検証は、本課題の一環として、教示行為を含む情報伝達の早期発達の解明に貢献することが期待される。現段階で行っている研究は、研究課題の不可欠な下位研究である。これからは、本研究の結果をまとめ、公表した上、研究実施計画書に記載されるステップに沿って進めていく予定である。
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Research Products
(4 results)