2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J02417
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小川 伸一郎 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 和牛 / 枝肉形質 / SNP / ゲノム育種価 |
Outline of Annual Research Achievements |
約57万か所の一塩基多型(SNP)マーカーを用いて、枝肉6形質を対象とした黒毛和種去勢肥育牛のゲノミック予測(GP)を実施した。ベイジアンリッジ回帰法(BRR法)およびベイズB法(BB法)によりそれぞれのSNPの効果を推定した。全SNPのうちのおよそ6千か所および3万か所のSNPのみを用いたGPも実施した。いずれの形質についても、全SNPの情報の使用によって相加的遺伝分散の大部分が説明されているものと考えられた。全SNPによるGPの正確度は、枝肉重量で最も高く、次いで脂肪交雑、ロース芯面積、バラの厚さ、歩留基準値、皮下脂肪の厚さの順であった。SNP数の増加に伴い、正確度の値はわずかに高くなり、枝肉重量の場合においてのみ、BB法がBRR法に比べてわずかに高い正確度の値を与えた。ただし、正確度のこれらの差は実質的な差ではないと考えられた。 次いで、特に重要な枝肉形質である枝肉重量および脂肪交雑を対象に、約57万か所のSNPについて、実際に使用する等間隔SNPの数を順次変更しつつGPを実施した。ここでは、SNP型情報から作成されるゲノム関係行列を用いて育種価のゲノミック予測値を得た。両形質において、全SNPの利用による予測正確度の値の概ね80%および90%の値が、全SNPの千分の1および百分の1の数の等間隔SNPを用いた場合にそれぞれ得られた。このような結果は、黒毛和種の枝肉形質を対象としたGPにおける低密度・等間隔SNPパネル使用の相対的な有効性を示唆するものと考えられた。 また、低密度・等間隔SNPパネルの利用可能性を高めると期待されるアプローチとして、より高密度なSNP情報へのジェノタイプのインピュテーション(補完)を併用した分析も実施した。得られた結果から、低密度・等間隔SNPパネルとジェノタイプ補完との併用は、コスト効率の高いGPを行ううえで有用と推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の全体目標は、和牛の枝肉形質を対象としたゲノミック予測ならびに選抜(GPおよびGS)の導入可能性を高めることである。段階的な小目標として、まず、1)主要な枝肉6形質を対象とした高密度SNP情報によるGPについて、基本的な分析を行う。また、次の小目標として、2)より有益なGPを目指したSNP情報の利用方法の構築を目指すこととする。 今年度は、小目標1)の達成(および小目標2))の一部の達成)に向けて取り組むこととしていた。これに対し、所定の目標はおおよそ達成されているものと判断されたことから、本区分を選択するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、主に小目標2)の達成に向けて取り組む。形質の遺伝的構造に関する情報や公共のデータベースから得られる情報などを複合的に利用したSNP利用法の構築を目指す。また、必要に応じて、シミュレーションにより発生させたデータを用い、異なる分析モデルの使用等についても検討を加える予定である。
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