2015 Fiscal Year Annual Research Report
生体のエネルギー燃焼装置"褐色脂肪細胞"の分裂増殖能と制御機構の解明
Project/Area Number |
15J02438
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
深野 圭伍 北海道大学, 獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 褐色脂肪細胞 / 増殖 / 肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性的な寒冷刺激は褐色脂肪の活性化とUCP1 発現量の増加に加えて、褐色脂肪組織の過形成をもたらすことが知られている。この過形成は前駆細胞の分裂増殖と分化によると想定されているが、前駆細胞が褐色脂肪細胞へと分化するには4-5日の期間を要することから、急な寒冷刺激に対応するためには成熟褐色脂肪細胞の増殖が組織の増成に関わっている可能性がある。そこで、寒冷刺激により成熟褐色脂肪細胞の増殖が誘導されるか否かを明らかにするために以下の実験を行った。 ①.0, 1, 3, 5日間の寒冷環境で飼育したマウスから褐色脂肪組織を採取した。 ②.採取した組織の一部を用いて組織切片を作成し、増殖マーカーであるKi67の発現と細胞膜に発現する Proton-coupled monocarboxylate transporters-1(MCT1)の発現を免疫染色により解析し、褐色脂肪細胞の増殖がどの時期にどの程度起きているかを判定した。 ③.MCT1により個々に識別された細胞を褐色脂肪細胞とそれ以外の間質細胞に区別し、それぞれのKi67陽性細胞の割合を寒冷日数ごとに算出した。 上記の結果、Ki67陽性褐色脂肪細胞の割合は寒冷1日目からが有意に高くなっていることがわかり、寒冷5日目でも有意に高かった。一方、Ki67陽性間質細胞の割合は寒冷1日目から徐々に増加し、寒冷5日目で有意に高くなることがわかった。このことから、寒冷初期では分化した褐色脂肪細胞が増殖し急な寒冷刺激に対応しており、寒冷後期から前駆細胞や血管内皮細胞を含む間質細胞が増殖し組織の機能を高めていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
寒冷刺激による褐色脂肪細胞の増殖機構に関して、当初の目的に沿っておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
寒冷環境で飼育したマウスの褐色脂肪組織における遺伝子発現を網羅的に解析し、寒冷刺激に伴う発現変動を次世代シーケンサーを用いて調べる。これまでの実験結果と合わせて成熟褐色脂肪細胞の増殖に伴い発現量が増加する分泌タンパク質を候補分子として絞り込む。 候補分子として絞り込んだ分泌タンパク質が褐色脂肪細胞の増 殖を誘導するか否かを検討する。 1) 絞り込んだ候補因子について発現ベクターを作製し、HEK293細胞に発現させ組換えタンパク質を産生し、候補タンパク質を含む培地を採取する。 2) 褐色脂肪細胞に分化可能なHB2細胞をin vitroで分化させ、1項で得た培地を加え増殖アッセイを行なう。 3) 上記結果から絞り込んだ候補分子について、マウスに直接投与し、褐色脂肪組織を採取して成熟褐色脂肪細胞が分裂しているか否かを解析する。 4) 上記3項で使用したアゴニストに対するアンタゴニストもしくは siRNAを用いて寒冷刺激による増殖が抑制されることを確認する。
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Research Products
(3 results)