2015 Fiscal Year Annual Research Report
タンザニアにおける言語政策と言語態度―学校教育は言語態度にどう影響するか―
Project/Area Number |
15J02518
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
沓掛 沙弥香 大阪大学, 言語文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 質的調査 / 言語態度 / 言語政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、タンザニアの言語と教育の関わりの全体像を捉えることを目的としている。具体的には、言語、民族、宗教、都市部と農村部の格差等に広く焦点を当ててタンザニアの教育事情について明らかにする。そして、日本を含めたドナー国の教育開発援助が、実際に行われている学校教育を通して現地にどのようなインパクトを与えているかについて、人々の言語態度から明らかにすることを目指している。 平成27年度の研究では、まず5月に日本アフリカ学会でこれまでの研究の成果を発表し、多くのアフリカ研究者との意見交換を通して研究の課題を確認した。年度の後半(平成27年9月から平成28年1月)にはタンザニアに長期滞在し、南部の2つの州で調査を行った。各調査地の成人に対する聞き取り調査では、言語使用調査で300人、言語態度調査で60人の協力を得た。また、各調査地で学校訪問を行い、授業観察、教師へのインタビュー調査、生徒へのアンケート調査を行った。 タンザニアの実質的首都であるダルエスサラームにおいては、教育政策を担当する省の政策担当者にインタビュー調査など、言語政策に関する近年の動向を調査した。また、国際的な援助という点からはブリティッシュ・カウンシルへのインタビュー調査を実施し、現在行われている英語教育支援についての情報を収集した。 タンザニアにおける社会言語学的研究はこれまで多くの蓄積があるが、その調査地は主に都市部や北部地域に偏っている。そのため、南部タンザニアの3つの民族集団に関する調査を行う本研究は貴重なデータを提示することになる。また、南部タンザニアについては、北部よりも開発が遅れているために民族語の使用が活発に行われているのではないかという定説があったが、一概にそうとは言えない状況が現段階までの調査で浮かび上がっており、タンザニアの言語状況が新たな局面に差し掛かっていることが明らかになることも期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はタンザニア南部と沿岸部での調査を行う予定であったが、南部地域内での宗教的差異(キリスト教のプロテスタント/カトリックやキリスト教とイスラーム教など)が十分に顕著であったため、調査地を南部の2州に絞り、当初の計画通りの変数(言語、民族、宗教、都市と農村の格差)に基づき調査を行った。調査自体が当初より小規模なものになったわけではなく、むしろ移動や別地域での調査許可申請に割かれる時間が少なくなったことにより多くのデータを集めることができたため、本研究にとってよい決断であったと考えている。 ただし、膨大なデータを収集したため、現在まで鋭意分析中であり、研究成果を学術論文などに投稿するには至っていないことは反省点である。今後分析を終えたデータから随時発表していく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、すでに3つの学会および研究会での発表が決定している。2015年度の調査結果をもとに今後の課題を確認し、平成28年7月から9月にかけての3か月ほどの期間を利用し、タンザニアでの追加調査を行う。年度の後半(10月以降)は、データ分析および学術誌への投稿を積極的に行い、本研究の成果を発表するとともに、残る課題を確認していく。
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Research Products
(4 results)