2015 Fiscal Year Annual Research Report
太陽面爆発現象における速い磁気リコネクション発生機構の研究
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15J02548
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 卓也 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 太陽フレア / 乱流 / 磁気リコネクション / プラズモイド |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は、以上の目的の達成のために三つの研究成果を上げた。 一つ目は、非一様格子と熱伝導効果を組み込んだ高い時間・空間精度を持つ3次元磁気流体シミュレーションコード(NOODLES)の開発である。これにより、計算時間を抑えて、コロナ中での磁気リコネクションと彩層の活動現象(フレアリボン)を同時にシミュレーションで再現できるようになった。 二つ目は、NOODLESに実装した非一様格子の強みを生かした、太陽フレアの大規模計算である。この計算では、世界で初めて、フラックスロープ構造の噴出と直下の乱流的な電流シートのダイナミクスを同時に追う3次元磁気流体計算を数値的に再現した。この計算の中で、過去の研究から2次元計算で詳しく調べられていた電流シート中の「プラズモイド」と呼ばれるヘリカルな磁場構造が、3次元計算で現れる電流シート中でも多数発生し、そのダイナミクスと磁気流体不安定性が結合してフレアにおける磁気エネルギー解放を担っている様子が見えてきた。今後は、シミュレーションをより発展させ、大域的なエネルギー分配と電流シートにおける衝撃波構造、プラズモイドのダイナミクスに着目した解析を行い、速いエネルギー解放の詳細に踏み込む。 三つ目は、NOODLESコードを用いて、コロナ中での磁気リコネクションと熱伝導による彩層の加熱を解く3次元磁気流体計算を行い、太陽フレア観測において報告されていた、波状のフレアリボン形成がコロナ中の電流シート周辺で発達する磁気流体不安定性と直結して時間発展する様子を世界で初めて数値シミュレーションで再現した。今後、数値シミュレーションでどの場所でどの磁気流体不安定性が発達し彩層の波状の時空間構造を作るのかに着目して解析することで、フレアリボンの時空間構造と直接観測できていないコロナ中のエネルギー解放領域の時間発展との対応に直接踏み込む研究ができると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画から変更すべき点もあるが、研究はおおむね順調に進展していると考える。その理由は、研究目的を達成するために中心となる課題である「フラックスロープの噴出とその直下に形成される乱流的な電流シート中のダイナミクスの結合を追う3次元磁気流体シミュレーション」を数値シミュレーションコードの開発からスーパーコンピューターでの計算まで、実行できたためである。また、2016年度における計算資源の申請書を2015年度内に国立天文台提出し、十分な計算資源を使うことのできるアカウントに採択されたため、今後は、より数値モデルを発展させ、物理パラメータを変えた計算を行うことができる。 また、熱伝導入りの磁気流体シミュレーションコードを開発したことで、コロナ中での磁気エネルギー解放の時間発展と彩層の増光などの活動現象の時空間構造との関係性を直接的に議論できるようになった。これにより、フレアにおける彩層活動だけでなく、フレア直線の彩層の増光現象の物理(フレア前兆現象)を、数値シミュレーションと観測データとの比較によって議論できる。実際に開発したコードを用いて数値計算を行い、彩層の増光の時空間構造がコロナ中の磁気流体ダイナミクスと直結している様子が世界で初めて再現された。 以上から、シミュレーションコード開発と大規模計算の実行とが非常にうまくいったと言える。一方で、乱流的な電流シートの解析はとても難しく、予想以上に時間を要している。現在、様々な人との議論を深めて解析の手がかりを集めて解析をしている。特に、3次元計算で電流シート中に発生するプラズモイドの分布や個々の運動を詳細に追うことはとても難しく、その重要性の評価を見極めて、解析の切り口を探す必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
申請研究課題の目的を達成するために今後主に次の二点を目標に研究を進める。 一点目は、3次元磁気流体シミュレーションにおいて再現された、フラックスロープ直下の乱流的な電流シートにおける磁気エネルギー解放過程の解明である。3次元の電流シートで現れるプラズモイドは局所的にねじれた磁力線であるが、2次元の場合のように個々のプラズモイドを定量的に解析の土台に乗せる定義は未だにない。また、その寿命は2次元の場合に比べずっと短い。そのため、3次元のプラズモイドに着目した解析がどの程度重要かをまず評価する。プラズモイド周りの衝撃波構造の解析など、2次元の計算とほぼ同じ解析が適用できる問題から取り組み、3次元プラズモイドの全容に迫る。さらに、3次元の乱流的な電流シートの存在が大域的なエネルギー分配にどのように寄与するかも、プラズモイドの解析と並行して進める。 2点目は、フレアにおけるコロナ中の電流シートでの磁気流体ダイナミクスと彩層の活動現象との関係の理解である。開発したNOODLESコードを用いて、3次元方向の磁場のパラメータを変えた計算を行い、磁気エネルギー解放領域で発生する磁気流体不安定性の時空間構造のパラメータ依存性を調べると同時に彩層の応答を比較解析して、どこで、どの磁気流体安定性が彩層活動の時空間構造をもたらすのか、を調べる。 以上2点の結果をまとめて、電流シート周辺の磁気流体乱流の振る舞いと、フレア中に観測される彩層からコロナまでの活動現象を統一的に記述するモデルを作る。
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Research Products
(2 results)