2015 Fiscal Year Annual Research Report
非線形分散型波動方程式の解のダイナミクスに対する理論の構築
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15J02570
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
戍亥 隆恭 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ポテンシャル付き非線形シュレディンガー方程式 / 解の分類 / 大域ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
非線形分散型波動方程式の解の大域ダイナミクスを明らかにする観点から、池田正弘氏とディラックのデルタ関数をポテンシャルにもつ非線形シュレディンガー方程式の解の大域挙動の分類に関して研究を行った。この方程式に対して、ポテンシャルのない方程式の基底状態解のマスエネルギーよりも初期値のマスエネルギーが低い場合に、初期値における或る汎関数の符号によって解が散乱するか爆発するかが決まることが明らかになった。これと類似の結果は、ポテンシャルのない方程式に対してはすでに知られていた。しかしながら、ポテンシャル付きの非線形シュレディンガー方程式の基底状態解のエネルギーは、ない場合のそれより大きく、この主張のみでは散乱か爆発かに分類するという観点からは不十分であった。そこで初期値が偶関数であることを仮定することにより、ポテンシャル付き非線形シュレディンガー方程式の基底状態解のマスエネルギーよりも初期値のマスエネルギーが低い場合に、初期値における或る汎関数の符号によって解が散乱するか爆発するかが決まることを明らかにした。これは散乱解と爆発解に分類する観点からは最適の結果である。ここで用いた、偶関数性などの対称性を解に仮定することで最適性を導くという手法は、分散型波動方程式の大域挙動ダイナミクスにおいては新しい手法で、ポテンシャルを持つ様々な方程式に対して応用が可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非線形シュレディンガー方程式は、非線形クライン・ゴルドン方程式の光速を無限大にしたときの極限方程式とみなすことができる。本研究では、その非線形シュレディンガー方程式がデルタ関数をポテンシャルに持つ場合に、その解の大域ダイナミクスがマスエネルギーの条件の下で或る汎関数の初期値における符号で決まることを明らかにした。ここで用いた手法は、他のポテンシャル項を持つ場合にも応用することができる。従って、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
ディラックのデルタ関数をポテンシャルにもつ非線形シュレディンガー方程式の解の大域挙動の分類で用いた、偶関数性などの対称性を解に仮定することで最適性を導くという手法は、他の方程式にも応用できると期待される。そこで非線形クライン・ゴルドン方程式にもこの手法を応用することで、複素数値解の分類ができるエネルギーの範囲を広げることを試みる。
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Research Products
(1 results)