2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15J02626
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
飯島 正也 北海道大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ワニ / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
繰り返し収斂進化をしているワニ類の頭骨は、脊椎動物において形と機能の関係を調べるモデルとなっている。また、ワニ類は、水辺の生息域が化石化に好都合で、大量の保存状態の良い化石が手に入ることから、脊椎動物の食性の適応史をさぐる材料として最適である。 本研究では、ワニ類の食性の適応パターンを、頭骨形態の個体発生・系統発生をみることで探っていく。平成27年度は国内外の博物館(滋賀県琵琶湖博物館、群馬県立自然史博物館、ロンドン自然史博物館、ミュンヘン州立動物学コレクション、アメリカ自然史博物館、スミスソニアン国立自然史博物館、シカゴ・フィールド博物館、台湾国立自然科学博物館)において、ワニ類の現生・化石標本を対象とした調査を行った。 研究成果として、国内の学会でワニ類の咬合パターンの系統的示唆に関する発表を行った。上顎と下顎の咬合パターンは、ワニ類の2大グループ(クロコダイル類、アリゲーター類)を識別する重要な形質であるが、本研究では、この形質が系統関係ではなく吻部形態との相関に由来することを示した。また、学内シンポジウムにおいて、九州の鮮新統から産出したワニ化石に関する発表を行った。このワニは、日本の鮮新統・更新統より多産する長吻タイプのワニとは明らかに異なるワニであり、数百万年前の日本には、複数のワニが共存していた可能性を示した。本研究の内容については論文としてまとめ、現在国際誌に投稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね当初の予定通りに進んでいる。 ワニ類の頭骨の個体発生をさぐる研究では、10種のクロコダイル上科のワニの自然個体を200個体以上サンプリングし、頭骨の成長軌道を調べた。その結果、ワニ類の頭骨では成長と共に吻部の幅が広くなる傾向がみられることを明らかにした。この傾向は10種のワニ類で同様にみられたため、これがクロコダイル上科のワニ類、もしくはワニ類全体における、成長に伴う頭骨の生力学的変化である可能性がある。 ワニ類の系統発生をさぐる研究では、使用する標本の一つとして、大阪府岸和田市の更新統から産出した保存のよい骨格を分析した。その結果、この標本は大阪府豊中市から産出しているToyotamaphimeia machikanensisというトミストマ類ワニと同種である可能性が示唆された。先行研究では、これら2つの標本を比較し、主に吻部形態に大きな違いがある事が示されていたが、これは成長度合いの違いによるところが大きいことが分かった。その他の骨格形質において2標本はほぼ一致し、系統解析の結果も2標本が姉妹群であることを示した。同種の可能性がある2つのトミストマ類化石は大阪の更新統の別々の層準から発見されており、これらの層準は複数の氷期・間氷期サイクルによって隔てられている。日本のトミストマ類は、更新世の大きな気候変動を乗り越え、生きのびていた可能性があることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、現生・化石ワニ標本の観察のために、中国、オーストラリアの博物館・研究施設の訪問を予定している。化石標本も含めたワニ類の系統発生をさぐる研究では、日本の標本も含めたアジアの標本の記載・再検討をすることによって、新たな系統仮説を立てることを目指している。使用する標本の殆どが海外にあるため、28年度の研究費は主に旅費に充てたいと考えている。また得られたデータをまとめ、論文化に取りかかる。
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Research Products
(1 results)