2016 Fiscal Year Annual Research Report
エンタングルメントによるホログラフィック双対性の研究
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15J02740
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
芝 暢郎 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 量子エンタングルメント / AdS/CFT対応 / 超弦理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子重力理論の有力候補である超弦理論において量子重力に関する興味深い予想がなされている。それは「ホログラフィック双対性」というもので、「ある次元における量子重力理論とより低い次元の重力を含まない場の理論の間に完全な対応関係がある」という予想である。この双対性はAdS/CFT対応として超弦理論において成立している。 本研究の目的は場の量子論のエンタングルメントという視点から、ホログラフィック双対性に対する理解を深め量子重力の性質を解明することである。今年度はこのテーマについて1本の論文を学術雑誌に出版し、1本のプレプリントを出版した。 共形場理論における3種類の量子的操作として、局所的射影測定と、2つの共形場理論間のエンタングルメント生成と、2つの共形場理論間の部分系の入れ替えについて解析し、これらの操作に対するシンプルな経路積分による表現を発見した。そして、これらの操作のホログラフィック双対も発見した。またこれら3種類の量子的操作を組み合わせて、2つの共形場理論の間の量子テレポーテーションに類似した情報伝達法を考案し、そのホログラフィック双対も与えることが出来た。この研究成果は学術雑誌にて出版済みである。 また、磁場が存在するときに起こる顕著な現象としてアハラノフ・ボーム効果があるが、それが共形場理論における量子エンタングルメントに及ぼす効果を研究した。特にエンタングルメントエントロピーを一般化したレニーエントロピーを厳密に計算した。この研究成果はプレプリントとして出版済みである。 また2016年8月末から2018年2月末までの予定で、ホログラフィック双対性の一流の研究者らと共同研究を行うためアメリカのハーバード大学物理学科に長期滞在している。現地では研究室でセミナー発表を行ったり、研究室のメンバーと議論し情報交換をするなどして研究を遂行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
場の量子論におけるエンタングルメントとホログラフィック双対性の関係についての解析が順調に行われているため。共形場理論における測定などの量子的操作のホログラフィック双対の発見は、これらの量子的操作は、量子情報理論において重要な役割を果たしており、その共形場理論における表現やホログラフィック双対性を求めることは、エンタングルメントの視点からホログラフィック双対性に対する理解を深める上で重要である。 また、磁場が存在するときに起こる顕著な現象であるアハラノフ・ボーム効果が共形場理論における量子エンタングルメントに及ぼす効果の研究では、特にエンタングルメントエントロピーを一般化したレニーエントロピーを厳密に計算したが、このように外場がある状況でのレニーエントロピーの厳密解はほとんど知られておらず、この研究は場の量子論におけるエンタングルメントの研究として基本的で重要なものである。
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Strategy for Future Research Activity |
場の量子論におけるエンタングルメントエントロピーは共形場理論の真空状態に対しては良く調べられているが、外場が加わった状況では一般に共形対称性が破れるので解析的な研究が困難になり、厳密解はほとんど知られていない。2次元自由共形場理論ではアハラノフ・ボーム効果によるレニーエントロピー(エンタングルメントエントロピーを一般化したもの)の変化を厳密に計算できたが、相互作用がある場合には場の理論での計算は困難である。そこで強結合の場の量子論におけるアハラノフ・ボーム効果によるエンタングルメントエントロピーの変化をホログラフィック双対性を使って解析していく。
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Research Products
(2 results)